2024年5月放送 テレビ朝日 宮部みゆき原作
算額
霊験(不思議な力)を持つ主人公のお初が連続殺人事件の解決に挑むというミステリー・ホラー時代劇です.算術の好きな与力見習いの右京之介が,お初に算額の問題を見せる場面(TVerで37分から38分の間)です.
お初「算額にはどのようなことが書かれているのですか?」右京之介「お見せしましょうか.右の絵①では外側の大きな円の長さ,左の絵②では内側の2つの小円の径の長さを求めるのです」お初「ひょうでもって測ったらどうかしら」右京之介「それを算術で求めるところが学問なのです」
左右対称なので中心が直径上にある甲,丁の半径が分かればすぐに答えが出てしまいますから,甲,乙,丙または乙,丙,丁の半径が与えられていると推測できます.実際,3つの互いに外接する円があれば,その3円を内接させる大円がひとつ決まるので,乙,丙,丁の半径が与えられていると考えられます.
互いに外接する3円を内接させる大円はデカルトの円定理を使って求めることができます.3円の半径をa, b, cとし,大円の半径をrとすると,この定理で次の方程式が成り立ちます(証明難).2(1a2+1b2+1c2+1r2)=(1a+1b+1c−1r)2例えばa=1,b=2,c=3のときは,2(112+122+132+1r2)=(11+12+13−1r)2これを解くとr=6となります.
ところで以前,これの類題を,各円の中心間を斜辺とする直角三角形に三平方の定理を適用して求めましたが,非常に大変な計算になりました.
②の絵では,大円1つと小円2つが正三角形に内接し,大円と小円が外接しています.
問題文を読むことはできませんでしたが,正三角形の1辺と大円の中心の位置または半径が与えられていると思われます.計算をなるべく簡単にするため,正三角形の1辺を12として,底辺の中点が原点になるように置き,大円の中心を(0, 4)とします.小円の中心を(b, c)とおき,半径cを求めます.
大円の半径DEは,点(0, 4)と直線 y=−√3x+6√3 との距離なので,DE=|0+4−6√3|√1+3=3√3−2
直角三角形DGIに三平方の定理を当てはめると,(4−c)2+b2=(3√3−2+c)2小円の半径 c=IHは,点(b, c)と直線 y=−√3x+6√3 の距離なので,c=|√3b+c−6√3|√1+3連立方程式(1)(2)を解けば,cは求められます.複雑な計算を経て最後に次の方程式を解きます.3c2−(18√3+4)c+21+12√3=0すると,小円の半径は次の値になります.c=\frac{2+9\sqrt{3}-2\sqrt{46}}{3}≒1.3413
(②の別解) 大円の中心より半径を与える方が計算が楽ではないかと思い,大円の半径を3,その中心を(0, a),小円の中心を(b, c)とおいて計算してみました.
大円の半径DEは,点(0, a)と直線 y=-\sqrt{3}x+6\sqrt{3} との距離なので,DE=\frac{|0+a-6\sqrt{3}|}{\sqrt{1+3}}=3a=6\sqrt{3}-6直角三角形DGIに三平方の定理を適用すると,(6\sqrt{3}-6-c)^2+b^2=(3+c)^2\tag{1}小円の半径 c=IHは,点(b, c)と直線 y=-\sqrt{3}x+6\sqrt{3} の距離なので,c=\frac{|\sqrt{3}b+c-6\sqrt{3}|}{\sqrt{1+3}}\tag{2}連立方程式(1)(2)を解けば,cは求められます.複雑な計算を経て最後に次の方程式を解きます.c^2+(2-8\sqrt{3})c+57-24\sqrt{3}=0すると,小円の半径は次の値になります.c=-1+4\sqrt{3}-2\sqrt{4\sqrt{3}-2}≒1.4883というわけで,初期条件を変えてもやはり大変な計算になりました.ああ,しんど(笑).
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