Monday 29 December 2014

小説 1Q84

平均律
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 『平均律クラヴィーア曲集』は数学者にとって、まさに天上の音楽である。十二音階すべてを均律に使って、長調と短調でそれぞれに前奏曲とフーガが作られている。全部で二十四曲。第一巻と第二巻をあわせて四十八曲。完全なサイクルがそこに形成される。
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 ふかえりが天吾に聞かれて、お気に入りの音楽はバッハの『平均律クラヴィーア曲集』だと答えた場面です。ここでの「天上」とは「最高の」「この上ない」という意味だと思われます。なぜ数学者にとってそんなに良い音楽なのでしょうか。
 平均律は、1オクターヴを均等な周波数比で12等分した音律、すなわち十二平均律を意味する場合が多いようです。すると1オクターヴ上の音は周波数が2倍になるので、均等に分けると1つの半音につき周波数は「12√2=12乗根2」倍になります。音階の分類が、「公比が累乗根を使って表される数である等比数列」で表されているからでしょうか。このことが数学者が歓喜するほどのことだとは思えないのですが…。それとももっと他に意味があるのでしょうか。