Friday 13 November 2009

映画 サマー・ウォーズ

Shorの因数分解アルゴリズム 数学オリンピック モジュロ演算 暗号

主人公の健二が夏希の誕生日の曜日を当てる(実はモジュロ演算で計算して求める)場面です.文庫本2009年8月20日発行第3版では,
夏希「わたし? 7月19日.平成4年」
健二「土曜日です
夏希「え?」
健二「1992年7月19日は,日曜日です」
となっていたのでこれはおかしいと思って映画を見てみたら、
夏希「わたし? 7月19日.平成4年の」
健二「日曜日です
夏希「え?」
健二「1992年7月19日は,日曜日でした」
となっていました.文庫本は間違いで,映画の方が正しかったようです.

モジュロ演算はツェラーの公式(Zeller's Congruence)が元になっています.西暦の上2桁を$J$,下2桁を$K$,月を$m$,日を$d$として,$$[J/4]-2J+K+[K/4]+[26(m+1)/10]+d$$(ここで$[x]$は$x$を超えない最大の整数.ただし1月・2月は前年の13月・14月として計算)
を計算し,この値を7で割った余り$r$が,0なら土曜,1なら日曜,……,6なら金曜になります.夏希の誕生日の$r$は1となるので日曜日になります.因みに,私の誕生日も日曜ということがわかりました.

Thursday 12 November 2009

小説 容疑者Xの献身

四色定理(四色問題) エルデシュ
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 ずんぐりした体型で、顔も丸く、大きい。そのくせ目は糸のように細い。頭髪は短くて薄く、そのせいで五十歳近くに見えるが、実際はもっと若いのかもしれない。身なりは気にしないたちらしく、いつも同じような服ばかり着ている。
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 このように原作の小説での数学の教師はダサく描かれてありましたが、映画ではけっこう二枚目の俳優が演じていました。しかもこの俳優は、ドラマ「やまとなでしこ」で数学者の役をしていました。このドラマに登場する数学についてはこちら

Tuesday 10 November 2009

小説 ダ・ビンチ・コード

円周率π 黄金比φ フィボナッチ数列
 円周率をギリシャ文字π(PI)で表すのと同様に、黄金比の値もギリシャ文字φ(PHI)で表されます。主役の大学教授が黄金比についての講義をしていた場面で、数学専攻のある学生の台詞が次のように訳されていました。
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私立探偵(PI)と混同しないでくださいよ。僕ら数学をやっている者はよくこういうんです。黄金比(PHI)はHがあるおかげでPIよりずっと切れ者だってね!」
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 どうもこの訳はおかしいと思って原文を調べてみると、"PHI is one H of a lot cooler than PI!" となっていました。それなら「PHI(黄金比)はPI(円周率)よりHという文字がひとつ多い分だけカッコいいんですよ」というような意味なのではないかと思いました。
 同じ疑問を持った読者から、この部分は誤訳ではないかと指摘された訳者のコメントは以下の通りでした。
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 実は、この個所を訳していたとき、"PI"の意味が "私立探偵(Private Investigator)"なのか"π(pi)"なのかでかなり迷いました。私立探偵のほうを採用した理由は以下のふたつです。(1) 大文字で"PI"と書かれている場合、英語圏のミステリー小説の読者のほとんどは「私立探偵」の意味をまず思い浮かべる。(2) 「ファイはパイよりクールだ」という読み方は、たしかに語呂はいいが、ジョークになっていない。一方、私立探偵は"cool"(=かっこいい、切れ者)の代名詞と言ってもいいほどなので、そちらの意味にとれば気のきいたジョークになる。ただし、ここはアメリカ人でも意見が分かれるところかもしれません。また、作者はこの作品のいたるところで、ひとつの単語を二通りに解釈させるという技巧を使っており、この個所にも両方の意味をこめたのではないかと察せられます。その場合、翻訳小説においては、どちらか一方の意味を採用して、もうひとつの意味を切り捨てざるをえない場合もある、ということをどうかご理解ください。」(角川グループパブリッシングのホームページより)
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Monday 9 November 2009

小説・映画 博士の愛した数式

オイラーの等式 ネイピア数 完全数 友愛数 他多数
 数学ブームの火付け役になったという点で、総合すると小説も映画もいい作品です。が、少々気になる点があったので、それも見どころのひとつということで述べます。
 まず映画のなかに√1=±1という誤解を招く表現があります。このミスをあとで試写会の時になってから気づいた監修の岡部恒治埼玉大学教授が、その話を雑誌「数学セミナー」2006年2月号で語っています。中学校の数学の先生になった「ルート」君が授業をしているシーンにありますので注目してください。
 一般に「オイラーの公式(Euler's formula)」は e^(iθ)=cosθ+isinθ をいうので、それにθ=πを代入して得られる等式 e^(iπ)=-1 を「オイラーの公式」と呼んでいるのが気になります。
 最も小さい「完全数」は6です。6以外の約数1、2、3を加えると6になります。プロ野球「阪神タイガース」の背番号6番といえば1981年に打率.358で首位打者を獲得した藤田平を思い出す人も多いでしょう。個人の好みで言うと、派手な江夏より地味な藤田を取り上げてほしかったと思います。
 小説では江夏のカードを探す場面が間延びして冗長な感を受けますが、映画ではその場面はなく、あっさりと仕上がっています。ただ、博士と義姉が能を鑑賞しながら手をつないでいる場面は小説にはなく、不要に思いました。
(追記)その後、地上波TVで放映された映画では、能を鑑賞するシーンは削除されていました。