Friday, 30 March 2018

テレビ番組 ちちんぷいぷい 桜開花予想 

2018/03/28放送 MBS

指数関数・対数関数

テレビ番組「ちちんぷいぷい」で桜の開花日を予想する数式が登場しました.

数式を考察する前に,次の基本事項を押さえておきましょう.
①桜は夏に花芽(かが)ができ,休眠を始める.
②秋冬の気温の影響を受けながら休眠した後,冬のある日に休眠から覚める(「休眠打破」という).
③花芽は休眠打破の後,寒ければ小さく,暖かければ大きく生育し、ある生育量に達すると開花する.

番組では「AI技術 VS 気象予報士」という設定で,どちらがより正確に開花日を予想するかを勝負するというものでしたが,よく調べてみたら,どちらも大阪府立大学の教授らによって考えられた数式が元になっていて,それに他の要素を加味して補正することで予想に違いが出ることが分かりました.

番組で登場した数式  (1)
番組で登場した式(1)は気象庁でも使われていた式で,式(2)は大阪府立大学の教授らの論文(2017年)の中の式です.y=exp(x)は$y=e^x$と同じ意味で,ネイピア数eを底とする指数関数です.数字/文字の違いはありますが,(1)と(2)は基本的には同じ式です.

式中に登場する温度(単位:K)は絶対温度=摂氏温度+273.2という値になります.従って,絶対温度の288.2Kは摂氏でいうと15°Cになります.以下はその教授らの論文からの抜粋です.
温度変換日数(DTS = the number of days transformed to standard temperature)とは,ある一定の温度条件で1日間置かれたときの植物の生育過程が,あらかじめ決められた標準温度$T_s$(K)の下での条件に変換すると何日分の生育過程に相当するかを表す指数である。日平均気温が$T_{ij}$(K)であるi 年のDOY=day of year(または通日)j における温度変換日数$(t_s)_{ij}$(日)は,以下の式のように表すことができる。$$(t_s)_{ij}=\exp \left\{ \frac{E_a(T_{ij}-T_s)}{R\ T_{ij}\ T_s} \right\} \tag{2}$$ここで$E_a$は生育の温度に対する応答の特性を代表する温度特性値(J mol-1),$R$ は普遍気体定数(8.314 J mol-1 K-1)である。本研究では,青野・守屋(2003)にならい,標準温度$T_s$を15℃(288.2 K),$E_a$を70 kJ mol-1 として,ソメイヨシノの開花日の推定モデルに一貫して使用した。 
開花日の推定の際には,地点ごとに定められた適切な起算日$D_2$から式(2)の$(ts)_{ij}$を積算し始め,その値があらかじめ定められた特定の値23.8($DTS_2$)に達した日を推定開花日とする。起算日$D_2$は3つの地理的・環境的変数を使って,比較的簡単に地点ごとに計算できる。起算日$D_2$は次の式(3)で推定される。
$D_2=136.765-7.689Ψ+0.133Ψ^2\\ \hspace{ 40pt } -1.307\ln L+0.144T_F+0.285{T_F}^2 \tag{3}$
ここでΨは緯度(°N),Lは海岸からの距離(km),TFは1, 2, 3 月の平均気温の平年値(℃)である。なお,海岸沿いの地点の場合,Lには1kmを適用する。
なぜ海岸沿いなのに1kmを適用するのかというと,式(3)のlnLは自然対数logeLを表しますから,Lが1未満だとlnLの値は急激に$-∞$に向かい,現実的でないからだと思われます.さて,式(1)を簡単にすると,$$\exp \left \{ \frac{9500(t-288.2)}{288.2t} \right \}$$
式(2)に定数を代入し,$T_{ij}$をtで表すと, $$\exp \left \{ \frac{8420(t-288.2)}{288.2t} \right \}$$となります.分子の係数が,式(1)は9.5×103=9500,式(2)は70000/8.314≒8420なので少し異なりますね.

この式で休眠打破(起算日)後の1日当たりの生育量を求め,積算して23.8になった日が開花日になります.極端な例でいうと,起算後の毎日の平均気温がずっと15℃だったら23.8日後に開花するということになります.この23.8という値は大量の過去のデータをもとに算出されたものだそうです.

この番組の最後に,勝負に負けた方からの面白いコメントがありました.「桜の気持ちもありますからね」

[Reference]
自発休眠期の気温を考慮したソメイヨシノの開花日の簡便な推定法
青野靖之・村上なつき(2017年)
さくら開花予想方法について
気象庁
桜の開花予想、国が認めた“魔法の公式”
https://withnews.jp/article/f0180319001qq000000000000000W08e10701qq000016960A

Saturday, 10 March 2018

小説 人魚姫の椅子

森 晶麿 著 2016年 早川書房

小説を書くのが好きな高校生海野杏(あん)と,そのクラスメイトで椅子職人を目指す五十鈴彗斗(すいと)は毎日少しだけ話をする仲.ある日,2人の同級生で杏の親友である若槻翠(みどり)の失踪事件が起こり,驚くべき真相が明かされていくという話です.

小数点以下切り上げ
彼自身は(練習を)三回に一回はサボっている。が、それを指摘すると「俺は毎回来とる」と主張する。小数点以下はすべて繰り上げてしまうタイプなのだ。
天井関数 (www.mathwords.com)
「繰り上げ」というのは一度決まった順位を後になって上げることをいうので,ここでの正しい表現は「小数点以下はすべて切り上げてしまう」ですね.「3回に2回は出席している」ということなので,2/3=0.6666...となり,小数第3位を切り上げれば0.67=67%になりますが,小数点以下を切り上げると1,すなわち出席率100%となって「俺は毎回来とる」という理屈になるのでしょう.

ところで,小数点以下を切り上げる関数を天井関数(ceiling function)といい,$y=\lceil x\rceil$と表します.例えば$\lceil 1.3\rceil=2$,$\lceil \frac{2}{3}\rceil=1$,$\lceil -0.8\rceil=0$となるので,右図のような階段状のグラフになります.各線分の右端の点は含まれ,左端の点は含まれません.

床関数 (www.mathwords.com)
これに対し,小数点以下を切り捨てる関数は床関数(floor function)といい,$y=\lfloor x\rfloor$と表しますが,日本の高校数学の教科書ではガウスの記号といって$y=[x]$と表し,「xを超えない最大の整数」という説明になっています.例えば$\lfloor 1.3\rfloor=1$,$\lfloor \frac{2}{3}\rfloor=0$,$\lfloor -0.8\rfloor=-1$となるので,これも右図のような階段状のグラフになりますが,各線分の左端の点は含まれ,右端の点は含まれません.

このように端数の処理をすることを「丸める(round)」ともいいます.小数点以下を四捨五入(round half up)する関数を丸め関数と呼ぶ場合もありますが,一般に「丸める」というと天井関数や床関数も含み,さらに異なる位の四捨五入もあるうえ,他にも「五捨五超入」や「偶数丸め」などいくつかの方法が含まれます.

ベクトル
波の音が変わったのだ。波の音は変わりやすい。水と水のベクトルの違いが生む無益な争いの結果、潮の流れが微かに変わるタイミングなのか、それとも遠くで巨大なシャチが跳ねたせいなのか。
ベクトルといえば向きと大きさのある量なので,一般の文章でベクトルを「方向」や「進路」という意味だけに使われているときは少し違和感を感じます.しかし,ここでは水の流れを方向も強さもあるものとして扱っているので,上の表現は適切だと思います.

数学の時間
――杏ちゃん、明日は数学のある日やね。寝たらあかんよ。
笑った顔でそう言ったはずが、翠の母親は泣きだしていた。
きっと、(失踪した)翠が家で、わたしが数学の時間になると居眠りすることを面白おかしく話していたのだろう。
はい、と答えるのが精一杯だった。
「数学の授業は眠い」というのは定番なんでしょうか.このような話はよく聞きますね(笑).

[Reference]
Ceiling Function
http://www.mathwords.com/c/ceiling_function.htm
Rounding
https://en.wikipedia.org/wiki/Rounding