Tuesday 27 December 2011

小説 天地明察

和算/算術/算学 関孝和 勾股弦

作品中に問題が3問あり、その都度先を読まずに解いてみました。

①辺の長さがが9, 12, 15の直角三角形に2点で内接する半径の等しい二つの円が互いに外接しているとき、円の直径を求める問題。

これは半径をr、一方の円の接線の長さをxとでもおいて連立方程式をつくれば正解の30/7はすぐに出たのですが、他サイトに他の解法がいろいろ紹介されていました。

②大正方形と小正方形が図のように重なっていて、2つの正方形の対角線の長さの比が30/7のとき、それぞれに内接する小円と大円が重なっている部分を図のように二等分する線分の長さを求める問題。

これは一見して2つの正方形の対角線の長さの比は√(2):1のはずなのでおかしいと思ったら、やはりその後に問題が間違っていたことが書かれていました。因みに√(2):1で計算すると、この長さは小円の半径を1とした場合、√(2)-1になります。ただこれは算術の名人に出すにはあまりにも簡単です。

③15個の大きさの異なる円があり、それらの周の長さはある数列になっていて、小さい順にa(1)からa(15)としたとき、a(1)+a(2)=10, a(5)+a(6)+a(7)=27.5, a(11)+…+a(15)=40のとき、a(1)を求める問題。

これは等差数列か等比数列かと思って解こうとしましたが正解が出ないので他サイトを検索してみたところ、この数列の一般項をnの2次式と置いて行列を用いて解いていました。ただし、この出典はある神社の算額に実際に書かれていた問題で、小説ではこの値を変えたものでした。ところがオリジナルの問題ではきちんと解が得られるのに、この小説で変えられた値で解くとうまくいかないようです。詳細はこちら。

映画では間違いがなければいいのですが。

Sunday 18 December 2011

韓国ドラマ「雪の女王」第1話

数学オリンピック Ψ(n) ζ(n) 
 韓国のエリート高校「韓国科学高校」の図書館。数学書にこれまで聞いたことのない"Kobrodsy Function"というのが出てきたので検索してみたところ、このドラマの監修を担当したソウル大学研究員の文章が見つかり、実はこのドラマの中だけで名付けられたものだと分かりました。その由来はKobrodsy=KBS(Korea Broadcasting System)。以前「古畑任三郎」にも「ファルコンの定理」という架空の用語が出てきたことを思い出しました。
 余談ですが、韓国の人はフルネームで呼び合うことが多いようです。

Saturday 3 December 2011

ドラマ 水戸黄門「難問ぞろいの算術対決」


和算・算学・算術 相似 油分け算 魔方陣 七方陣 算木・算盤 関孝和

①まず相似を利用して火の見やぐらの高さを求める場面がありました。中学校の教科書に載っているような問題でした。

②次に油分け算がありました。10升ますと7升ますと3升ますがあり、10升ますに水がいっぱい入っている。すなわち(10升ます, 7升ます, 3升ます)=(10,0,0)である。これを(5升, 5升, 0升)=(5,5,0)に分けます。ドラマでは「先に7升入れるからだめなんだ。」と言って(10,0,0)→(7,0,3)→(7,3,0)→(4,3,3)→(4,6,0)→(1,6,3)→(1,7,2)→(8,0,2)→(8,2,0)→(5,2,3)→(5,5,0)と移して、「できた、できた。」といって喜ぶのですが、先に7升入れてもできるし、その方がこのように一手早くできます。(10,0,0)→(3,7,0)→(3,4,3)→(6,4,0)→(6,1,3)→(9,1,0)→(9,0,1)→(2,7,1)→(2,5,3)→(5,5,0)。監修の方はご存じなかったのでしょうか。

③算術対決の1問目は7*7魔方陣でした。他のサイトを検索すればすぐに正解が分かります。

④算術対決の2問目は図の小円の円径(直径)を1寸とするとき、黒く塗りつぶされた部分の面積を求める問題です。
小円の半径は1/2、大円の半径をr、すなわち正方形の一辺をrとすると、三平方の定理で、
(r-1/2)^2+(r/2)^2=(r+1/2)^2
これを解いてr=8
求める面積Sは、
S=πr^2・(1/12)+2{πr^2・(1/6)-(1/2)・r・(√(3)/2)r}=(r^2)/12・(5π-6√(3))
となるので、r=8を代入すると、
S=16/3・(5π-6√(3))=28.3501......
すなわち、ドラマの中の解答「弐拾八歩参分有奇(にじゅうはちぶとさんぶあまりわずか)」となります。

⑤算術対決の3問目は図の大中小10個の円の直径の和が149寸のとき、中央の側円(楕円)の短径を求める問題。
正方形の一辺を2aとし、大円の半径をxとすると、
x^2=a^2+(2a-x)^2
これを解いて、x=5/4*a
小円の半径をzとすると、
3/5*x+2z=x
これを解いて、z=1/5*x
計算を簡単にするため、a=4, x=5, z=1としてかなり計算すると、中円の半径yは、
y=8/5
正方形の中央を原点とし、楕円と右上の中円との接点をPとしてこれもかなり計算すると、その座標は、
P=(2,  √(12/5))
この点を通る楕円の(短径/2)をbとして、その方程式を、
(x^2)/(4^2)+(y^2)/(b^2)=1
とし、Pの座標を代入してbを求めると、
b=4/5*√(5)=1.7888......
x=5, y=8/5, z=1としたときの10個の円の半径の和は108/5なので、直径の和は216/5。出題の直径の和が149だったのでそうなるように拡大すると、
b'=6.1698......
よって楕円の短径は
2b'=12.3397......
となり、ドラマの中の解答「九寸有奇(きゅうすんあまりわずか)」になりませんでした。どなたか計算してみた方、ご連絡ください。

(2012年1月14日追記)
 今日出典の問題を見つけました。「和算で遊ぼう」佐藤健一著(かんき出版)121ページです。オリジナルの問題は10個の円の直径とさらに正方形の一辺と楕円の長径も加えて149寸でした。それでもう一度計算したところ、149/37*√(5)=9.0047......となり、確かに「九寸有奇(きゅうすんあまりわずか)」になりました。
 ということで、ドラマの中の出題は正方形の一辺と楕円の長径が不足していたということが分かりました。監修の方はしっかり確認してほしいものです。放送後1ヶ月半たってようやくすっきりしました。

Sunday 13 November 2011

小説 神様のカルテ

一+止=正 1+4=5
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(主人公の名前について)「一に止まると書いて、正しいという意味だなんて、この年になるまで知りませんでした。でもなんだかわかるような気がします。人は生きていると、前へ前へという気持ちばかり急いて、どんどん大切なものを置き去りにしていくものでしょう。本当に正しいことというのは、一番初めの場所にあるのかもしれませんね。」
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この意味についてとは断っていませんが、「一度止まって考えよ。そうすれば正しい答えが得られる。」という意味の内容を述べている部分もありました。
またこう考えることもできます。
1+4=5
漢字を使用する国で5ずつ数えるのに、「正」という字を書いていく方法はよく使われますが、これが画線法(かくせんほう)"Tally Marks"と呼ばれることはあまり知られていないようです。欧米ではI, II, III, IIIIの次に全体に斜線を入れて5を表し、南米ではまず口(四角)を書いてその中に斜線を入れて5を表すそうです。

Saturday 5 November 2011

映画 猿の惑星:創世記(ジェネシス) Rise of the Planet of the Apes

ハノイの塔 Tower of Hanoi (=Lucas Tower) 

薬剤の投与で賢くなった猿が「ハノイの塔」(映画の中ではLucas Tower)というパズルをすばやく仕上げる場面があり、ディスクが4枚のときの最小移動回数は15回という内容の台詞がありました。

n枚のディスクを移動させるには、n-1枚をまず他の場所に移動させて、次に最下部の1枚を目的の場所に移動させ、いったん移動させたn-1枚をもう一度最下部の上に移動させなければならないので、n枚のときの最小移動回数をa(n)とすると、
a(n+1)=a(n)+1+a(n) すなわち a(n+1)=2a(n)+1
という簡単な漸化式が成り立ちます。これを解くと、
a(n)=2^n-1
となるので、n=4の場合の最小移動回数は2^4-1=15となります。

余談ですが、猿の保護施設職員で猿をいじめる役があのハリーポッターのドラコ・マルフォイ役の俳優であることを知らなかったので、見ているときに気付いたときは驚きました。

Saturday 22 October 2011

ドラマ チーム・バチスタ3「アリアドネの弾丸」第3話

死亡推定時刻の計算
 被害者の直腸温度から死亡推定時刻が午後9時ごろだったとの検視官の判断に疑問を持った白鳥と田口が真実に気づく場面。
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「遺体に凍傷がなかったということは、ヘリウムで冷やされたとはいえ、気温は0度以下にはならなかったということだ。死後経過時間は、気温が0度の中での体温降下が1時間当たり1.24だったとすると…、約8時間。わかったよ、グッチ! 友野君の死亡時刻は午前1時前後だ。」
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 このとき白鳥がガラス窓に書いた数式は、
tp=(tw-tr)/K
tp=(37-27)/1.24≒8h
つまり、死亡時体温が37度、測定時体温が27度で、その間に10度下がった。体温降下が1時間当たり1.24だったので、10/1.24=8.064516129…で、約8時間というわけです。意外に簡単な式でした。
 その後、「死亡推定時刻」について検索したら、多くのサイトで、ニュートンの冷却法則を使うと書かれていました。この法則によると、体温をT、周囲の気温をTm、時間をtとすれば、微分方程式
dT/dt=-k(T-Tm)
が成り立ちます。この式は、体温の下がり方は周囲の気温との差に比例するということを意味しています。これを解くと、死亡時体温をT0とすれば、
T=Tm+(T0-Tm)exp(-kt)
となり、この式を用いて死亡推定時刻が計算できます。分かりやすく解説しているサイトを見てみてください。

Saturday 20 August 2011

映画 コクリコ坂から From Up On Poppy Hill

高等数学
 1963(昭和38)年の横浜を舞台にしたこの物語の中に出てくる高校のクラブに「高等数学部」というのがありましたが、なぜこれだけ「高等」という言葉がついていたのでしょう。数学の場合、大雑把にいって「初等数学」は高等学校まで、「高等数学」は大学以上で学習する数学を意味します。つまりこれは「高等学校の数学」ではありません。すなわちこのクラブは大学程度の数学を高校生が学習しようというクラブなのです。数学は積み重ねが必要ですから、当然高等学校までの数学を習得していなければこのクラブ活動はできません。昭和時代中期の高校生は大学生にも負けない学生運動をしていたこともありました。この時代は高校生が今よりもずっと大人だった(または背伸びしていたともいえる)時代だったようです。1950(昭和25)年まで存在した旧制高等学校(現在の大学教養課程にあたる)の後、現在の新制高等学校になってまだ間もないころの話です。
 似た言葉に「初等関数」「高等関数」があります。これも大雑把にいって「初等関数」は高等学校まで、「高等関数」は大学以上で登場する関数を意味します。余談ですが「教育」という言葉は少し違っていて、「初等教育」は小学校、「中等教育」は中学校と高等学校、「高等教育」は大学以上の教育を意味します。なので「○○中等教育学校」を校名にする中高一貫校があります。

Saturday 14 May 2011

小説 数学的にありえない アダム・ファウファー

確率論 誕生日問題
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「(60人の)このクラスに同じ誕生日の者が少なくとも2人以上いる確率は、99.4%ということになります」
「10人だったとしたら、…」「約12%です」
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n人の中に同じ誕生日の者が少なくとも2人以上いる確率Pは、
P=1-365!/(365^n*(365-n)!)
という式で求められますが、これを電卓に計算させようとするとOverFlowというエラーになるので、グラフ電卓でプログラムを作成して計算させました。

この講義の先生は「自分は60人のクラスに同じ誕生日の者が少なくとも2人以上いるほうに5ドル賭けようじゃないか。受けて立つかね?」といって自分は99.4%のほうに賭け、学生には0.6%のほうに賭けさせ、まんまと金を手にします。正解を知らない学生を相手にこんなことをするとはずるい先生です。

Tuesday 3 May 2011

アニメ 焼きたて!!ジャぱん 第40話

26進数 RSA暗号 メッセージ数値化
 2001年から2007年まで週刊少年サンデーに連載された料理・グルメ漫画。ピエロが暗号を作るため地面に26進法で
13×26^7+1×26^6+13×26^2+1×26^4+4×26^3+15×26^2+11×26+15
という計算したはずですが、アニメの中でに実際に出てきた計算は、次のようになっていました。
(13×26)^?+(1×26)^6+(13×26)^5+(1×26)^6+(4×26)^4+(15×26)^?+11×26+15
 括弧は不要なうえに指数も間違っています。アニメを制作する人が「13掛ける26の7乗」は「13に26の7乗を掛ける」べきところを、「13×26を7乗する」と解釈してしまったのでしょう。制作段階で最後にチェックを入れてほしかったですね。

Sunday 1 May 2011

小説 パラドックス13 東野圭吾

パラドックス13
パラドックス
 パラドックス(paradox)はよく「逆理」と訳されますが、ここでは「数学的矛盾」と表されています。「数学的連続性」「論理数学的」という言葉も出てきますが、この話を読んでいる限りでは、「物理学的」とか「宇宙学的」と言った方が当てはまるような感じがしました。
 有名なもので、ラッセルの逆理(Russell's paradox)というものがあります。
 「『自分自身を含まない集合』全体の集まり」をSとする。Sも集合と考えると『自分自身を含まない集合』か『自分自身を含む集合』のいずれかである。
 ①Sが『自分自身を含まない集合』であるとする。自分自身を含まないのだからSはSを含まないはずである。しかし元々Sは「『自分自身を含まない集合』全体の集まり」だから『自分自身を含まない集合』Sを含むはずである。よって矛盾。
 ②Sが『自分自身を含む集合』であるとする。自分自身を含むのだからSはSを含むはずである。しかし元々Sは「『自分自身を含まない集合』全体の集まり」だから『自分自身を含む集合』Sを含まないはずである。よって矛盾。
 ①②のどちらを仮定しても以上のような矛盾が生じるので、「『自分自身を含まない集合』全体の集まり」Sを集合と考えることはできません。このような集まりはproper class(真類)と呼ばれています。

Monday 25 April 2011

小説 暗号解読 サイモン・シン

素数 素因数分解 因数分解
現代社会でよく使われているRSA暗号は、大変大きな素数が使われています。例えば221は素数だと思いますか。実は合成数です。では何と何の素数の積でしょうか。正解は13×17です。このことは、素数2, 3, 5, 7, 11で割りきれないことを確かめ、13で割り切れることを確かめてからようやくわかることです。13×17=221は簡単に計算できますが、221が13×17であることはすぐに分かりません。このように大きい合成数の素因数分解がとても時間がかかるということを利用して暗号が作られているわけです。もちろん実際はもっとはるかに大きな素数の積が使われています。
 素因数分解や因数分解など、教科書で習う時に「こんなのどこで役に立つんだろう」と思いますね。実際、買い物をするときの計算では役に立たないわけですが、このおかげで私たちの個人情報などさまざまなものがセキュリティで守られているわけです。素因数分解や因数分解も実は実社会では有り難い存在なのですね。

Sunday 13 February 2011

映画 The Social Network

イロレーティング (Elo Rating)

 映画の中に出てきた数式が気になったので調べてみたら、それはArpad Emrick Eloという人が2人制ゲームにおける実力の格付けをするため考案した"Elo Rating"という算出法の中で用いる式でした。これは現在、チェスなどの公式的な強さを示す指標として用いられているそうです。ちなみに映画に登場した式は、対局者A、Bの現在のレートをRAおよびRBとしたとき、それぞれが勝利する確率EA、EBを求める式でした。(EA+EB=1になります)
残念ながらそれまでこの数式どころか"Elo Rating"という言葉さえも知りませんでした。この映画のおかげで新たな数式と出会うことになったわけです。世の中、知っていることより知らないことのほうがずっと多いわけですが、たまたま身近に現れた「知らないこと」は「知らない」の一言で終わらせるのではなく、なるべくすぐに調べて自分のものにしてしまえばいいと思いませんか。そうすればまた新たな知識が身につき、さらに成長することができます。これからも常に向上心を持って何事にも取り組んでいきましょう。

Monday 10 January 2011

ドラマ 探偵ガリレオ 「爆ぜる(はぜる)」

フィボナッチ数列 リュカ数列
 大爆発を阻止するための暗号解読の場面で、
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 「連続する二項の比が黄金比に収束している。フィボナッチ数列か。いやフィボナッチ数列に見せかけたリュカ数列。」
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 フィボナッチ数列は漸化式
      a(1)=0, a(2)=1, a(n+2)=a(n)+a(n+1)
を満たす数列で、最初の10項は
      0,1,1,2,3,5,8,13,21,34,........
これは連続する二項の比が黄金比に近づいていきます。
 リュカ数列はa(1)=2ですが、それ以外はフィボナッチ数列と同じ条件で、最初の10項は
      2,1,3,4,7,11,18,29,47,........
これも連続する二項の比が黄金比に近づいていきます。
 どちらも直前二項の和が次の項になっているため、途中の数を一見したときにリュカ数列をフィボナッチ数列と間違えそうになったわけです。