Sunday 1 May 2011

小説 パラドックス13 東野圭吾

パラドックス13
パラドックス
 パラドックス(paradox)はよく「逆理」と訳されますが、ここでは「数学的矛盾」と表されています。「数学的連続性」「論理数学的」という言葉も出てきますが、この話を読んでいる限りでは、「物理学的」とか「宇宙学的」と言った方が当てはまるような感じがしました。
 有名なもので、ラッセルの逆理(Russell's paradox)というものがあります。
 「『自分自身を含まない集合』全体の集まり」をSとする。Sも集合と考えると『自分自身を含まない集合』か『自分自身を含む集合』のいずれかである。
 ①Sが『自分自身を含まない集合』であるとする。自分自身を含まないのだからSはSを含まないはずである。しかし元々Sは「『自分自身を含まない集合』全体の集まり」だから『自分自身を含まない集合』Sを含むはずである。よって矛盾。
 ②Sが『自分自身を含む集合』であるとする。自分自身を含むのだからSはSを含むはずである。しかし元々Sは「『自分自身を含まない集合』全体の集まり」だから『自分自身を含む集合』Sを含まないはずである。よって矛盾。
 ①②のどちらを仮定しても以上のような矛盾が生じるので、「『自分自身を含まない集合』全体の集まり」Sを集合と考えることはできません。このような集まりはproper class(真類)と呼ばれています。

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