Friday 13 September 2019

小説 万能鑑定士Qの最終巻 ムンクの<叫び>

2016年 松岡圭祐著 講談社 

ピタゴラスの定理

「万能鑑定士Q」シリーズ完結編.沖縄の高校卒業後,東京生活の出発点となったリサイクルショップに戻った万能鑑定士・凜田莉子が,ムンクの絵画「叫び」の盗難事件を追いながら、探偵になった元雑誌記者・小笠原悠斗への愛に気付いていくという話です.
 陸が莉子を見つめてきた。「ならききたい。赤道上にぴんと張ってある紐を一センチ延ばしたら、人がくぐれるようになるか?」
 意地でも間違えられない。莉子はピタゴラスの定理を駆使し、頭のなかで計算した。「一メートル持ちあがるから、くぐれるでしょう。二等辺三角形の底辺は百の二乗マイナス四分の一がふたつ並び、斜辺はいずれも百の二乗プラス四分の一、そして垂直方向に高さ百センチと考えられるので」
「ほう!」陸が目を輝かせた。「やるな。ロジカル·シンキングに計算力も伴ったか。しばらく会わないうちに、頭の回転が速くなった」
 漢那が莉子にきいた。「どういう計算?」
 小笠原がいった。「赤道の長さは関係ないんだよ。百メートルぐらいは、地球の表面も平坦とみなすだけ」
たまたま電車の中で読んでいて,これはどういう計算なのかすぐに分からず,その後ネットで検索しても納得のいかない解答1解答2しか見つからなかったので,じっくりと考えてみたところ,ようやく解明できました.

まず問題の文章が不十分でした.赤道(地球を1周する円周)と同じ長さの紐を1cm延ばすのではありません.水平面上に「百の二乗マイナス四分の一」=$100^2-\frac{1}{4}=9999.75$ (cm) の2倍の長さの紐があってこれを底辺とし,その両端を0.5cmずつ計1cm延ばして中央を持ち上げ,「百の二乗プラス四分の一」=$100^2+\frac{1}{4}=10000.25$ (cm) の斜辺2つが屋根になるような(直角三角形を背中合わせに2個貼り合わせた)2等辺三角形の高さを求めるという計算だったのです.


ピタゴラスの定理で高さを計算すると,$$\sqrt{10000.25^2-9999.75^2}=100$$(cm) となり,確かに凜田莉子の出した解答と一致しました.

小笠原がいった「地球の表面も平坦とみなす」というのは参考になりましたが,「赤道上にぴんと張ってある紐」は「百メートルぐらい」ではなく,実際は$9999.75×2$ (cm) なので,200mぐらいというべきでした.

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