2019年9月16日放送 フジテレビ
子どもを抱いたまま階段から落ちて自分だけ亡くなっていた母親の死因を,監察医らが解剖や落下実験などで解明しようとします.ドラマの中では話題になりませんでしたが,背景に数式の書かれたホワイトボードがありました.その式をよく見ると,水平方向に押されて落下し,着地した瞬間の速度を求める計算であることが分かりました.
また,h=12gt2 より
3=12×9.8×t2=129.8t2
t2=3×29.8=69.8=0.612...
≒0.6
t=√0.6
着地した瞬間の水平方向の速度をvx,垂直方向の速度をvyとして,その合成速度vを求めています.vx=v0
vy=gt=9.8√0.6
v0=5 m/s とすると
v2=v2x+v2y=52+(9.8√0.6)2
=25+(96.04×0.6)=25+57.624
=82.624
v=√82.624=9.089...≒9.1 m/s
3行目の v [m/s] =g [m/s2] は明らかなミスですね.「h [m] 落下した瞬間の速度v [m/s] は,重力加速度をg [m/s2]とすると」とすべきでしょう.
5行目のvはvyですね.この後,落下にかかった時間tを求め,vy=gtからまたもやvyを求めています.しかも,途中でt2を丸めたことによる誤差が出て,初めの14√0.3と後の9.8√0.6は異なる値になってしまっています.正確には前者で,t2を丸めなければどちらも14√0.3になるはずです(計算してみてください).
そうすると,着地した瞬間の速度は次のようになります.
v2=v2x+v2y=52+(14√0.3)2=25+(196×0.3)=25+58.8=83.8
v=√83.8=9.1542...≒9.15 [m/s]
ところで最初に親子の体重の和があるので,この後さらに着地時の衝撃力を計算するはずだったと思われます.
着地時の物体は、mv [kg·m/s] という運動量を持ち,着地後は着地面からの力 F [N] を一瞬の時間 ∆t [s] だけ受け、運動量は0になります.このときの力Fを衝撃力といい,次式で求められます.
F=mv∆t [N]
水平方向に押されて,高さ3mから落下したとするこの計算の場合,着地後に速度が0になるまで仮に0.1秒かかったとすると,
F=mv∆t=55.3×9.150.1≒5060 [N]
となり,落ちてぶつかったところに約5000 [N],およそ500 [kgf] ぐらいの衝撃を受けたものと推測されます.
[参考]
衝撃力の計算
http://higgs.phys.kyushu-u.ac.jp/~koji/shougeki.pdf
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