
数学の才能を持つコンビニ店員の若い男(健次郎)が,大学入試問題漏洩に関与させられたあげく殺されてしまった事件の謎を,杉下右京が解き明かすという話です.
漸化式の解法
健次郎がニセ学生となって講義を聴き,終了後,教授に質問をする場面です.
「この証明,別の方法もあると思うんです.僕ちょっと考えたんですけど,まずですね,両辺を(−1)n+1で割るんです.そうするとこれ,ただの等差数列になるんです.」この場面では数学に関する台詞はこれだけでした.別解を考えついて正しいかどうかを確認しに来たものと思われます.これは漸化式の解法のひとつです.注意深く録画したビデオを見てみると,板書には,漸化式から一般項を推測し,それを数学的帰納法で証明する解答が書かれてありました.その板書の一部は次の通りです.
a1=1, an+1=−an+(−1)n
a1=1, a2=−2, a3=3, ⋅⋅⋅⋅, an=n⋅(−1)n+1実際にこの漸化式の両辺を(−1)n+1で割ると,an+1(−1)n+1=an(−1)n−1となります.すると数列{an(−1)n}は,初項a1(−1)=−a1=−1,公差−1の等差数列となり,an(−1)n=−1+(n−1)⋅(−1)=−nなので,一般項はan=−n⋅(−1)n=n⋅(−1)n+1と分かります.
受験生にはよく知られた解法ですが,仮に未習だったとしても,教授が「驚きました.彼は,我々には考えつかないユニークな発想を持っていたんです.」と言っていたのは少しオーバーな気がしました.
積分順序の交換
健次郎が二重積分の問題を解くシーンがありました.
I=∫2a0dx∫√4ax√2ax−x2f(x,y)dy
の積分順序を交換せよこれは,I=∫∫Df(x,y)dydx(Dは右図の放物線と円と直線x=2aで囲まれた領域)とも書けます.先にyで積分してx軸に垂直な切り口を求め,それをxで積分して,領域Dと曲面z=f(x,y)に挟まれた部分の体積を求める式ですが,積分順序の交換だけなのでf(x,y)は何でもOKです.
この手順を交換するのですから,先にxで積分してy軸に垂直な切り口を求め,それをyで積分する式をつくるとこのようになります.
∫a0∫a−√a2−y2y24af(x,y)dxdy+∫a0∫2aa+√a2−y2f(x,y)dxdy+∫2√2aa∫2ay24af(x,y)dxdy
道順の確率
「選択肢に正解がなかった」という台詞が何度もありました.どんな問題だったのでしょう.録画したビデオからその問題が分かりました.
[問題4] xy平面上の点Aが,原点(0, 0)から点(n, n)(nは3以上の自然数)まで以下のルールで動く.調べてみたらこの出典は,東工大入試問題の1987年第5問の改題と分かりました.元の問題には選択肢がないので難しいですが,この改題なら,n=3の時の解,すなわちP(3, 2)を求め,選択肢にn=3を代入してこの値になるものを選べば良いわけです.(3, 3)へ行くには(3, 2)または(2, 3)を通るしかないので,対称性よりP(3, 2)=P(2, 3)=1/2となります.ところがn=3を選択肢①~⑤のどれに代入しても1/2になりません.なので「選択肢に正解がなかった」というわけです.
1. 点(k, l)にあり,k<n,l<nならば,点(k+1, l)か点(k, l+1)に1/2の確率で動く.
2. 点(n, l)(l<n)なら点(n, l+1)へ,点(k, n)(k<n)なら点(k+1, n)に確率1で動く.
このとき点Aが(n, 2)を通過する確率P(n, 2)は次のうちどれか.
①(n+1)(12)n+1 ②(n2+1)(12)n+2 ③(n2+5n)(12)n+3 ④1(n2−4n+1)n ⑤n2n+1
[Reference]
Math-Station 東工大入試研究
http://kubojie.net/titech.html