2017年6月4日

NEWS 大学新テスト記述式問題例 

2017年5月16日に発表された独立行政法人大学入試センター「大学入学共通テスト(仮称)」記述式問題のモデル問題例が,翌日の新聞各紙に掲載されました.「どんな問題だろう」と解いてみた人も多いのではないでしょうか.その中の4問目(数学の2問目),銅像が最もよく見える位置を考察する,すなわち銅像の頭Aと足元Bまでを見込む角が最大になる視点Pの位置を考えるという問題が少し気になりました.問(1)は具体的な数字を与えられて∠APBを求めるもので特に問題を感じませんでしたが,この後の展開が気になりました.
問(2) 銅像を見込む角が最大となるときの,見る人の足元の位置を「ベストスポット」と呼ぶことにする.この「ベストスポット」について,太郎さんは次のように考えた.
[太郎さんの考え] 3点A,B,Pを通る円の半径をRとすると,ABの長さは常に一定であることから,∠APBが鋭角ならば,∠APBが最大となるのは,Rが最小のときである.
ということは,Rがどんなときに最小になるかをこれから考えていくんだなと思ったら,次はこんな問いでした.
(i) ∠APBが鋭角であることを確かめる方法を,△APBの3辺の長さAB,AP,BPについての式を用いて説明せよ.
ここでわざわざ「∠APBが鋭角である」ことを確かめる必要があるのでしょうか.銅像の足元を視点より低くして,よっぽど近寄らないと見込む角は鈍角にはなりません.銅像の足元Bは視点Pより高いので,∠APBが鋭角であることは明らかです.この状況を図に描いたら,100人中100人は∠APBが鋭角になるでしょう.
(ii) [太郎さんの考え] が正しいことは,sin∠APB,AB,R を用いたある関係式と,「∠APBが鋭角のとき,∠APBが大きくなるほどsin∠APB の値は大きくなる」ことからわかる.その関係式を答えよ.
これだけ誘導されていたら正弦定理とすぐに分かりますね.sin∠APB=AB/(2R)なので,「Rが最小」⇔ 「sin∠APBが最大」⇔ 「∠APBが最大」といえます.
(iii) 二人は [太郎さんの考え] について先生に相談したところ,Rが最小になるのは,3点A,B,Pを含む平面上において,3点A,B,Pを通る円と点Pを通り直線ABに垂直な直線が接するときであることを教えてもらった.この考え方に基づいて,目の高さが1.5mの花子さんが,高さ6.5mの台座の上に乗せた高さ4mの銅像を見る場合の最小R,最大∠APB,ベストスポットの位置を求めよ.
ようやくRが最小になるときを考えるのかなと思ったら,いきなり先生に相談です.自分たちで考える問題なのに「先生に教えてもらったこと」を前提にして話を次に進めています.この「先生に教えてもらったこと」を理解せずに次を考えるのは気持ち悪くないのでしょうか(この解説はこちらのサイトにあります).

この解説の別解で書かれているように, 「先生に教えてもらったこと」は,数学Ⅰまでの知識なら円周角を考えれば説明できます.他の方法で説明しようとすれば,正接の加法定理と相加平均・相乗平均の関係か方べきの定理,または微分を利用してもできますが,数学Ⅰの範囲を超えてしまいます.

日本の試験ではまだ使えませんが,グラフ電卓やそれに類似するソフト・アプリを使えば,数学Ⅰまでの知識でもこのことを確認することはできます.

まずA(0,9), B(0,5), P(x,0)とし,3点A,B,Pを通る円の中心をC(c,7)として,cをxの関数で表します.AC=BC=CPなので,
c^2+2^2=(x-c)^2+7^2
整理すると
c=(x^2+45)/(2x)
あとはこの関数を未習であっても,グラフ電卓等でグラフを描かせて最小値を表示させれば,ベストスポットの位置の近似解6.7が得られます.

国際バカロレア,米国のAPやSAT,英国のA Levelなどでは,グラフ電卓を使える試験と使えない試験の併用が当たり前のように実施されています.

視点をいろいろ変えたらどうなるかをGeogebraで作ってみました.点Pを動かしてみてください.

2017年3月5日

映画 君に届け


椎名軽穂(原作) 2010年 東宝

北海道の高校が舞台です.数学の授業の最後に問題を出しておいてノートに解答を書くよう指示して先に退室した先生から,黒沼爽子がノートを集めて持ってくるよう指示された…のではないかと思われます(こんな先生,あまりいないと思いますが…).
黒沼爽子「数学のノートを集めますので,持って来てください」 
かなり板書が読みづらかったのですが,こんな内容でした.
三角形の性質
<問題>
∠C>∠Bである△ABCで,∠Aの2等分線と辺BCとの交点をPとし,点Aから辺BCに下した垂線をAQとすると,2∠PAQ=∠C-∠Bとなることを証明せよ.
(以下の解答部分は自分で解いた後にドラッグして見てください)

<解答>
APは∠Aの2等分線より,∠BAP=∠CAP
∠APB=∠CAP+∠C … ①
∠APC=∠BAP+∠B … ②
①②より,∠APB-∠APC=∠C-∠B
仮定より,∠APB=180°-∠APC
     ∠APC=90°-∠PAQ
よって
∠C-∠B=∠APB-∠APC
    =180°-2∠APC
    =180°-2(90°-∠PAQ)
    =2∠PAQ
以上は板書の左半分に書かれてあった問題と解答ですが,右半分にあった生徒に出題されたであろう問題は読み取れませんでした.

上の問題はあまり見たことがなかったので,検索してみたらこちらにひとつ見つかりました.

この結果がどんな三角形でも成り立つことを確認できるものをGeogebraで作ってみました.頂点を動かしてみてください.

2016年8月23日

ドラマ 受験のシンデレラ

和田秀樹(原作) 2016年 NHK

分数 三角関数 積分 実数 直円錐

人気塾講師五十嵐透が貧しい高校生遠藤真紀を東大に合格させようとする話です.1/2+1/3=2/5と答えた真紀に対し,お好み焼きを6等分して1/2+1/3=5/6を説明していました.

第3話
オープニングクレジット(Opening credits)にいくつかの問題が一瞬だけ表示されます.

①sinθ-cosθ=14となるとき,sinθcosθの値を求めよ.
この問題は,第4話から「sinθ-cosθ=1/4となるとき」に訂正されていました.高校数学Ⅱの三角関数の合成を習うと,sinθ-cosθ=√2sin(θ-π/4)と変形でき,この値の絶対値は√2より小さいことが分かりますから,sinθ-cosθ=14はあり得ません.たぶん,視聴者からの指摘があって訂正したのではないかと思われます.訂正された問題の正解は15/32になります.解いてみてください.
第4話

他にもかすかに問題が読み取れました.

②曲線y=x^2+x+2-2xと直線y=2mx+2で囲まれる部分の面積が最小値となる定数mを求めよ.
この曲線の式は同類項xと-2xがまとめられていないのが既におかしいですね.まとめると曲線y=x^2-x+2となりますが,このまま解くと面積の最小値が0(このときm=-1/2)になってしまって,間違いではないですが少しおかしな問題になります.

③実数t,x,y,zが下の条件を満たす.x,y,zのうち,2つが等しい値となるときのtの値を求めよ.
x+y+z=t
x^2+y^2+z^2=t^2-t+10
x^3+y^3+z^3=t^3-3t^2+4t+12
いろいろやってみましたが,すっきりした値が出ないので,zをyに置き換えてWolframAlphaに
solve x+2y=t,x^2+2y^2=t^2-t+10,x^3+2y^3=t^3-3t^2+4t+12
と入力してみたら,有効数字6桁のtの値が5つ出てきました.問題のどこかが間違っているような気がします.

④直円錐の頂点をP,底面の直径の両端をA,B,線分APの中点をQとする.このとき,点BからQに至る最短距離を求めよ.
これは具体的な値が与えれていないので,文字だけで計算することになります.母線APの長さをR,底面の半径をrとして,展開図の側面の扇形を考え,線分BQの長さを求めればいいですね.側面の扇形の中心角をθとすれば,θ=2πr/Rなので,△PQBの∠P=θ/2=πr/Rとなり,PB=R, PQ=R/2なので,余弦定理より
$BQ^2=R^2+\left(\frac{R}{2}\right)^2-2\cdot R\cdot\frac{R}{2}\cos\frac{\pi r}{R}$
よって,BQの長さは次式になります.
$BQ=R\sqrt{\frac{5}{4}-\cos\frac{\pi r}{R}}=\frac{R}{2}\sqrt{5-4\cos\frac{\pi r}{R}}$

このドラマの原作者は東大卒の精神科医で,大学受験対策本や啓蒙書も多数執筆されていて,中には「なぜ数学が得意な人がエグゼクティブになるのか」とか「数学は暗記だ!」など,ちょっと気になる本も出されています.

<2017年1月3日追記>
最終回(2016年8月28日放送)の中で2017年1月15日センター試験「数学Ⅰ・数学A」の問題が少しだけ映っていました.もちろんフィクションなので本物ではありません.実際は,第1問から第3問が必答で,第4問~第6問から2問選択ですが,ドラマでは必答にすべき2次関数の問題が選択になっていました.読み取った問題を掲載しますので解いてみてください.

(ドラマの中の問題)
数学Ⅰ・数学A
第5問(選択問題)(配点 20)
2次関数
      y=-x^2+2x+1  …①
のグラフの頂点の座標は(ア,イ)である.また
      y=f(x)
はxの2次関数で,そのグラフは,①のグラフをx軸方向にp,y軸方向にqだけ平行移動したものであるとする.
(1) 下の(ウ)(オ)には次の⓪~④のうちから当てはまるものを一つずつ選べ.ただし,同じものを繰り返し選んでもよい.
      ⓪> ①< ②≧ ③≦ ④≠
2≦x≦4におけるf(x)の最大値がf(2)になるようなpの値の範囲は
      p(ウ)(エ)
であり,最小値がf(2)になるようなpの値の範囲は
      p(オ)(カ)
である.
(2) 2次不等式f(x)>0の解が-1≦x≦5になるのは
      p=(キ) q=(ク)
のときである.
(3) 2次不等式f(x)>1の解が-1≦x≦5になるのは
      p=(ケ) q=(コ)
のときである.

二次関数の最大値/最小値を求めたり,二次不等式を解くだけなら易しいのですが,このように,解が先に分かっていて元の関数の式を決定する問題は少し難しくなります.ドラマの中での主人公の解答は(カ)と(コ)が間違っていましたが,全科目900点満点中728得点だったので良かったですね.

(正解)
(1) (ア,イ)(1, 2)   (ウエ)≦1   (オカ)≧2
(2) (キ)1   (ク)7   (ケ)1   (コ)8

GeoGebraで正解を確認できるものを作ってみました.pとqの値を変えてみてください.
https://www.geogebra.org/m/CT4gKJvV

2016年8月22日

映画 Hidden Figures (予告編)

2016年 20th Century Fox

等辺 台形 二等辺 正四面体 4次方程式

まだ人種差別法が存在していた1960年代、NASA(アメリカ航空宇宙局)でマーキュリー計画に数学で貢献した実在のアフリカ系アメリカ人女性Katherine Johnsonたちを描いた映画です.2016年8月現在,まだ公開されていないので,予告編を見ただけでこれを書いています.
Katherine "equilateral, trapezoid, isosceles, tetrahedlon,....."
Teacher "I've never seen a mind like the one your daughter has."
最初の4語は,等辺,台形,二等辺,正四面体です.equilateral triangleなら正三角形,equilateral quadrilateralなら等辺四角形すなわちrhombus(菱形),isosceles triangleなら二等辺三角形になります.その次が,小学生の時の先生が両親にKatherineの才能について話した台詞です.飛び級していたのでしょうか,Katherineが高校生のクラスで,2次式×2次式=0という4次方程式を解く場面がありました.

$(x^2+6x-7)(2x^2-5x-3)=0$
$(x+7)(x-1)(2x+1)(x-3)=0$
$x=-7,\quad  1,\quad  -1/2,\quad  3$

日本語のタイトルは何だろうと思って探しましたが見つからないので機械翻訳してみると,「隠された数」「隠された図」などが出てきたのですが,figureには人物の意味もあり,栄光の陰で支えた人たちを描いているので,「陰で活躍した人たち」がいいのではないかと思います(検索したら中国語のサイトには「隐藏人物」と出てきました).

2016年8月9日

アニメ 山田君と7人の魔女 第1話

吉河美希(原作) 2014年 講談社

ベクトル 微分積分

身体を入れ替ることができる不良生徒山田竜と優等生白石うらら,他に数名が超常現象研究部をつくって,同じ高校にいる7人の魔女探しをするという話です.冒頭でいきなり数学Ⅱの小テストの答案が現れ,できなかった山田竜を先生が叱っている場面から始まります.
先生「君は学校を何だと思っているのかね.この私立の名門,朱雀高校開校以来初めてだよ.毎日のように遅刻・早退を繰り返し,あちこちで喧嘩三昧,揚句,授業中に居眠りだと!? 山田竜!」
この小テスト,変なところががいくつかありました.
・小テストなのにやたら問題数が多い.
・「解答」と書くべきところがすべて「回答」となっている.
・どの解答欄も極端に狭い.
・なぜか横に緑茶の入った湯呑がある.
・数学Ⅱなのに数学Bや数学Ⅲの範囲の問題が出ている.
・しかも小テストにしてはけっこう計算の面倒な問題がある.例えば, 「次の曲線や直線で囲まれた部分の面積を求めよ」
(1) y=(x-e)logx, y=0
(2) (3) 略
(4) y=sinx, y=sin2x (0≦x≦π)
解いてみたらこうなりました.
(1) -1/4e^2+e-1/4(≒0.621)
(4) 5/2(=2.5)
(数学Ⅲを既習の人は確かめてみてください)
それにしても数学Ⅱの小テストなのですから,生徒の立場からすれば,出題範囲を越境しないでほしいですね.


2016年8月8日

小説 ラプラスの魔女

東野圭吾 2015年 角川書店

素数 ナビエ–ストークス方程式 ラプラスの悪魔
桐宮玲「もし,この世に存在するすべての原子の現在位置と運動量を把握する知性が存在するならば,その存在は,物理学を用いることでこれらの原子の時間的変化を計算できるだろうから,未来の状態を完全に予知できる――」
「ラプラスは,このような仮説を立てました.その存在のことは後年,ラプラスの悪魔と呼ばれるようになります.」
「ラプラスの悪魔」と呼ばれる知性を持つという主人公が女の子なので,このタイトルになったようです.数学では,ある物体の「現在位置と運動量を把握する」ということは「任意の点で導関数が満たす微分方程式を作る」ということを意味し,この微分方程式を解くことで,ある関数が求められ,それによってその物体の過去や未来の位置が計算できるようになります.

ナビエ–ストークス方程式は,流体(液体や気体など)の運動を表す非常に複雑な2階非線型偏微分方程式です. 「2階」は第2次導関数まで式の中にあるという意味で,「非線型」は「線型」でない,すなわち次の条件を満たさないという意味です.

        加法性: 任意のx,yに対してf(x+y)=f(x)+f(y)
        斉次性: 任意のx,αに対してf(αx)=αf(x)       

「偏微分方程式」は2変数以上の関数において,ある1つの変数について微分して得られる導関数を含んだ方程式という意味です.例えば,y=f(x)のとき,$\frac{dy}{dx}$はyをxで微分したもの,z=f(x,y)のとき,$\frac{∂z}{∂x}$はzを(x以外は定数と見做して)xだけで微分したものという意味です(∂は「ラウンド」とか「デー」などいくつか読み方があります).ナビエ–ストークス方程式は,難しすぎて未だに解決されず,クレイ研究所が「解けたら100万ドル」を贈るという懸賞付きの問題のひとつです.

ところで,$\frac{dy}{dx}$をもう一度微分すると,$\frac{d^2y}{dx^2}$になります.なぜ$\frac{dy^2}{dx^2}$ではなく,分子は$d^2y$で分母が$dx^2$と書くのかというと,$\frac{dy}{dx}$は$\frac{d}{dx}y$とも書けるので,$\frac{dy}{dx}$をもう一度微分すると,$\frac{d}{dx}\left ( \frac{dy}{dx}\right )$となり,分子はdが2個でyが1個,分母はdxが2個になるからです.(注)$(dx)^2$は$dx^2$とも書きます.$(AB)^2$を$AB^2$と書くのと同様です.

2016年7月31日

小説 未来方程式 -fate equation-

神世 希 2011年 講談社

英数字 三次元空間座標 緯度 経度

予知能力があるとされる少女初音未来を中心に起こる数々の事件が描かれた話です.
皇(すめらぎ)警部 「違う……そもそも8桁のパスワードが適当に打って当たるハズがないだろう.全部で218兆3401億0558万4896通りあるんだぞ」
波多野巡査 「そんなにあるんすか!?」
英数字(alphanumeric)8桁ということは,英字(alphabetic)26文字と数字(numeric)10文字で合計36文字が8桁なので,重複順列 36Π8=36^8=2兆8211億0990万7456 (通り) のはずです.しかし値が違うので,逆に218兆3401億0558万4896の8乗根を計算してみると62になりました.62=26×2+10なので,ここでは大文字と小文字を区別しているということが分かりました.それにしてもこんな数字を覚えているはずがないのにすらすらと言えるのが不思議ですね.
所長「20XX年に打ち上げられた人工衛星"おまわり参号(仮称)"は,明日―――世界時において6月6日正午には,地球を中心とする3次元空間上の座標,(x,y,z)=(171,1789,6841).緯度経度では,北緯75.3度,東経146.1度の,高度およそ7000メートルに存在することになる.これも立派な未来情報の一つだ」
この座標から緯度,経度,高度を計算してみましょう.原点をO,点(171,0,0)をA,点(171,1789,0)をB,点(171,1789,6841)をPとします.

[緯度] まず北緯のほうを確認してみます.$$OB=\sqrt{171^2+1789^2}≒1797$$なので,北緯は次の値になり,上の台詞の値と一致しました.$$\arctan\frac{BP}{OB}=\arctan\frac{6841}{1797}≒75.3°$$

[経度] OBx軸とのなす角は,$$\arctan\frac{AB}{OA}=\arctan\frac{1789}{171}≒84.5°$$になります.東経146.1度なので,146.1-84.5=61.6° が子午線と交わる赤道円の半径とx軸とのなす角になります.すなわち,x軸が東経61.6度の経線と交わっているとすれば,この座標の位置は東経146.1度になります.

[高度] まずOPの長さ(地球の中心から人工衛星までの距離)を求めます.$$OP=\sqrt{171^2+1789^2+6841^2}≒7073$$ここから地球の赤道半径約6378kmを引くと,7073-6378=695 (km) なので,高度は上の台詞の「およそ7000メートル」ではなく,およそ700kmということになります.飛行機の平均高度が約10000m (10km) なので,人工衛星は飛行機より約70倍高いところにあることがわかります.

因みに人工衛星の高度,速度,周期を調べてみたところ,重力加速度をg,地球の赤道半径をRとし,高度h(km)で回っている円軌道の場合,その速度v(km/sec)は次の式で計算できることがわかりました.
$$v=\sqrt{\frac{gR^2}{R+h}}$$
従って人工衛星の速度は、高度だけで決まり,高いところほど遅いということになります.軌道の円周2π(R+h)をこの速度vで割れば周期 t(秒)が計算できます.
$$t=\frac{2\pi(R+h)}{v}$$

高度        速度        周期
200km    7.8km/sec   1時間28分
500km     7.6km/sec    1時間34分
1,000km    7.4km/sec    1時間45分
36,000km    3.1km/sec    23時間56分(静止軌道)
380,000km    約1.0km/sec    約27日間

問題
上に出てきた高度700kmの人工衛星の速度,周期を求めよ.

(答)約7.5km/sec, 約1時間39分

参考
「人工衛星の高度と速度」宇宙航空研究開発機構(JAXA)

2016年7月23日

小説 数学的帰納の殺人

草上 仁 2009年 ハヤカワ・ミステリワールド

ピタゴラス 完全数 フィボナッチ数列 嘘つき村 ガロア カルダン・グリル ステヴィン 懸垂線(カテナリー) ワイルズ メルセンヌ素数 フェルマーの最終定理 谷山・志村予想 楕円関数 円周率 モンティ・ホール問題 虚点

フォト・ジャーナリストの女性と大学教授の男性が,カルト教団による殺人連鎖の謎を追う話です.この殺人連鎖を数学的帰納法に例えてこのタイトルにしたようです.

2段組みで400頁を越える長編の随所に数学の話題が多数登場します.中には話の流れに乗らない余分な感じのするところもありましたが,謎解きは面白く,最後も少し驚かされたりして,けっこう楽しめました.

作品中に少し気になった点やもっと説明のほしいところがありました.
「三角形の下にぶら下がる球はロゴでは半円形に見えるが,実際には懸垂線つまりカテナリー曲線を描く.式にすると$y = a \cosh(x/a)$だね.この双曲線はバランス的に中立だから…(以下略)」
双曲線は反比例などの2つの同じ形をした曲線をいいます.懸垂線は双曲線関数(hyperbolic function)のひとつですが,双曲線関数は双曲線の媒介変数表示に使うからそう呼ぶのであって,形は双曲線ではありません.円関数(三角関数)は円の媒介変数表示に使いますが,形は円ではないというのと同様です.従ってここは「この双曲線は」ではなく,「この曲線は」でいいと思います.

懸垂線がなぜこの式になるかこちらにまとめてみました。
「二つの円は,常に四点で交わる.体験的にわかるのは二点までだ.しかし体系を普遍化していくと,そちらのほうが特殊な例であることがわかる.より一般的には,見えない二点――虚点を想定したほうが,多くの場合に成り立つのだ.」
2つの図形を表す連立方程式が実数解を持たない場合は$xy$平面上では交わりませんが,複素平面上で虚数解を座標とする点(虚点)で交わると見なすことができます.例えば,$y=x^2$と$y=2x-5$は実数解を持たないので$xy$平面上では交わりませんが,複素平面上の虚点$(1±2i, -3±4i)$で交わると考えることができます.

2つの円の場合は$x^2$と$y^2$の係数が等しいので,連立させると$x^2$と$y^2$の項が消えてしまい,交点が2つしか出てきません.従って複素平面上で考慮しても4つの交点はないのですが,さらに無限遠点を含む射影平面上で考えれば,平行な直線でも1点で交わり,どんな2つの円も4点で交わると見なすことができます.これをベズーの定理(Bézout's theorem)といいます.

2016年5月3日

映画 落ちこぼれの天使たち Stand and Deliver


1987年 米国

部分積分

荒れた高校の生徒たちと,そこへ赴任してきた教師がだんだん信頼し合っていくという話です.1987年の映画ですが,部分積分が登場することを最近知りました.生徒が黒板に書いた数式はこれです.
$\int{x^2 \sin x}dx$
$u=\sin x$           $dv=x^2dx$
$du=\cos xdx$     $v=\frac{1}{3}x^3$
$\frac{1}{3}x^3\sin x-\int{\frac{1}{3}x^3\cos x}dx$

 生徒は$du=\sin xdx$,$v=x^2$にすれば良かったのですが,逆にしてしまいました.教師が書いた解き方は,日本ではあまり見ない方法です.


これは表を使う方法(tabuler method)で解いています.この方法を使うと,繰り返しの必要な部分積分の計算が速くできます.

表をじっくり見てみましょう.左の列は$x^2$を次々に微分したもの,中央の列は$\sin x$を次々に積分したもの,右の列は符号です.折れ線でつながるものを与式の右辺に書き出せば正解が得られます.$$\int{x^2 \sin x}dx=-x^2 \cos x+2x \sin x+2 \cos x+C$$


2016年1月9日

漫画 和算に恋した少女 第2巻

天元術 算額

▼ 「はああ…… 天元術かあ……」
 「ごらん律,これが算額だ.自分で考えた問題を額にして神社に奉納するんだよ.父さんの算額はこれだ.答えが書いてないのは『遺題』といってね,『誰か解ける人はいるかい?』って訪ねているんだよ」
 「じゃあ,あたしが解く!」
 「うん,そうしたらおまえの答えを算額にしてこの隣に掲げなさい.」

江戸時代の数学を和算といいます.天元術とは一言でいうと方程式で問題を解く方法です.これまでに解いた算額の問題は三平方の定理を用いて円の半径などを求める問題が多かったので,この「父さんの算額」の問題も同じように解けると思ったらこれはかなりの難問でした.

他サイトで類題があり,①デカルトの円定理を使った解答と②反転法を使った解答が見つかったのですが,ここではピタゴラスの定理を使って解く方法を考えてみました.

計算を簡単にするため,図のように大円$O$の中心を原点,半径を$6$として,円$C$の中心を$(3, 0)$,円$C_0$の中心$(a_0, b_0)=(-3, 0)$とすれば,円$C_0$の半径 $r_0=3$となります.それ以外の円${C_n}$の中心を$(a_n, b_n)$,半径を$r_n$としましょう.
$C_{n-1}C_n$を斜辺とする直角三角形で三平方の定理より$$(a_{n-1}-a_n)^2+(b_{n-1}-b_n)^2=(r_{n-1}+r_n)^2\tag{1-n}$$ $OC_n$を斜辺とする直角三角形で三平方の定理より$$a_n^2+b_n^2=(6-r_n)^2\tag{2}$$ $CC_n$を斜辺とする直角三角形で三平方の定理より$$(a_n-3)^2+b_n^2=(3+r_n)^2\tag{3}$$ 以上の式を使って$r_n$をいくつか求めます

■まず$r_1$を求めましょう.この場だけ円$C_1$の中心$(a_1, b_1)=(a,b)$,半径$r_1=r$として計算します.式(1-n)でn=1とすると$$(-3-a)^2+(0-b)^2=(3+r)^2\tag{1-1}$$ 式(2)より$$a^2+b^2=(6-r)^2\tag{2}$$ 式(3)より$$(a-3)^2+b^2=(3+r)^2\tag{3}$$ まず(2)(3)から$a$と$b$を$r$で表すと$$a=6-3r,\quad b^2=24r-8r^2\tag{4}$$ (4)を式(1-1)に代入して$r$についての方程式を解くと$r=2$.これを(4)に代入して$(a, b)=(0, 4)$.すなわち,円$C_1$の半径と中心は次式になります.$$r_1=2,\quad (a_1, b_1)=(0, 4)$$ ■次に$r_2$を求めましょう.計算を簡単にするためにまた同じ文字を使います.この場だけ円$C_2$の中心$(a_2, b_2)=(a,b)$,半径$r_2=r$として計算します.式(1-n)でn=2とすると$$(0-a)^2+(4-b)^2=(2+r)^2\tag{1-2}$$ 同様に(4)を(1-2)に代入して$r$についての方程式を解くと$r=1, r=3$となりますが,$r$は$2$より小さいので$r=1$.式(1-2)が$r_2$の前後の$r$を求められる式になっているので,もうひとつの解である$3$は$r_0$の値になっています.$r=1$を(4)に代入して$(a, b)=(3, 4)$.すなわち,円$C_2$の半径と中心は次式になります.$$r_2=1,\quad (a_2, b_2)=(3, 4)$$ ■次に$r_3$を求めましょう.計算を簡単にするためにまた同じ文字を使います.この場だけ円$C_3$の中心$(a_3, b_3)=(a,b)$,半径$r_3=r$として計算します.式(1-n)でn=3とすると$$(3-a)^2+(4-b)^2=(1+r)^2\tag{1-3}$$ 同様に(4)を(1-3)に代入して$r$についての方程式を解きましょう.
$(3r-3)^2+(4-\sqrt{24r-8r^2})^2=(r+2)^2$
$9r^2-18r+9+16-8\sqrt{24r-8r^2}+24r-8r^2=r^2+2r+1$
$4r+24=8\sqrt{24r-8r^2}$
$r+6=2\sqrt{24r-8r^2}$
$r^2+12r+36=4(24r-8r^2)$
$33r^2-84r+36=0$
$11r^2-28r+12=0$
$(11r-6)(r-2)=0$
$r=\frac{6}{11}, r=2$
となりますが,$r$は$1$より小さいので$r=\frac{6}{11}$.$r=\frac{6}{11}$を(4)に代入して$(a, b)=\left(\frac{48}{11}, \frac{36}{11}\right)$.すなわち,円$C_3$の半径と中心は次式になります.$$r_3=\frac{6}{11},\quad (a_3, b_3)=\left(\frac{48}{11}, \frac{36}{11}\right)$$ ■次に$r_4$を求めましょう.計算を簡単にするためにまた同じ文字を使います.この場だけ円$C_4$の中心$(a_4, b_4)=(a,b)$,半径$r_4=r$として計算します.式(1-n)でn=4とすると$$\left(\frac{48}{11}-a\right)^2+\left(\frac{36}{11}-b\right)^2=\left(\frac{6}{11}+r\right)^2\tag{1-4}$$ 同様に(4)を(1-4)に代入して$r$についての方程式を解くと(計算略)$r=\frac{1}{3}, r=1$となりますが,$r$は$\frac{6}{11}$より小さいので$r=\frac{1}{3}$.すなわち,円$C_4$の半径は $r_4=\frac{1}{3}$ になります.

ここで求めた$r_n$を並べてみると,$2, 1, \frac{6}{11}, \frac{1}{3}, \cdot\cdot\cdot$
分子を6にすると,$\frac{6}{3}, \frac{6}{6}, \frac{6}{11}, \frac{6}{18}, \cdot\cdot\cdot$
分母は,$3, 6, 11, 18, \cdot\cdot\cdot$
この階差数列は,$3, 5, 7, \cdot\cdot\cdot$となり,その第k項は2k+1と推測できるので,分母の第n項は$$3+\sum_{k=1}^{n-1}(2k+1)=n^2+2$$ 従って円$C_n$の半径は次式になると推測できます.$$r_n=\frac{6}{n^2+2}\tag{5}$$ あとは数学的帰納法で$$r_{n+1}=\frac{6}{(n+1)^2+2}\tag{6}$$が成り立つことを示せばOKです.式(4)の添え字をnにして式(1-n)に代入して整理すると次式を得ます.$$12(r_{n+1}-r_n)^2+3r_n^2r_{n+1}^2-4r_nr_{n+1}(r_n+r_{n+1})=0$$ これに(5)を代入して整理すると(6)を得られて終了なのですが,この計算は大変なので,WolframAlphaにしてもらいました.($x=r_n, y=r_{n+1}$として計算しています)

これで式(5)が正しいことが分かったので,これを(2)と(3)に代入すると円$C_n$の中心の座標は次式になります.$$(a_n, b_n)=\left(\frac{6(n^2-1)}{n^2+2},\quad \frac{12n}{n^2+2}\right)\tag{7}$$
さらに式(5)も式(7)もnに0と負の整数を代入しても成り立ちますから,円Cの周りのすべての円の中心と半径が求められたことになります.確かに$n\rightarrow\pm\infty$のとき,中心の座標は$(6,0)$に,半径は$0$に近づいていくことが分かります.

<2016年12月4日追記>

上図の半径3の円CとC0と半径6の大円Oとで囲まれる部分をArbelos(アルベロス)と呼ぶことが分かりました.古代ギリシアで使われていたといわれる「靴屋のナイフ(Arbelos)」がこの形と似ているのでこういう名前になったそうです.


2015年3月26日

小説 風が強く吹いている


三浦 しおん 2006年 新潮社
楕円
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ひさしく覚えなかった高揚が、走(かける)の心と体を震わせた。
だがここは、永遠の楕円を描く競技場のトラックではない。
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 陸上競技のトラックは楕円(ellipse)というより楕円状(oval)ですね。国際陸上競技連盟(International Association of Athletics Federations = IAAF)の公認トラックは線分2本と半円2個でできていて、線分の長さが84.39m、円の半径が36.50m。円の外側0.30mのところを走って1周400mになるようにしているので、その計算は次のようになります。
84.39×2+2π×36.80=400.00m
 もしトラックが本物の楕円ならどうなるでしょうか。長軸をa、短軸をbとすると楕円の媒介変数表示は
x=acost, y=bsint
となります。公認トラックの端から端+0.3m×2の距離が
2a=84.39+36.80×2=157.99m
なので、この1/2のa=78.995mの長軸を持つ楕円で周長が400mになるものを求めてみましょう。楕円の面積はπabと簡単に求められるのですが、周長は難しい計算になります。媒介変数表示の曲線の長さの公式より
4∫[0 to π/2](Sqrt(a^2(cost)^2+b^2(sint)^2)dt=400
を解けばいいのですが、これは第二種完全楕円積分といって初等的な計算では求められません。そこでグラフ電卓を使って求めると、短軸が46.17mになりました。この楕円を実際のトラックに重ねてみると図のようになります。公認トラックの図はIAAF official websiteから引用しましたが、そこではoval trackとなっていました。図の下のキャプションは、「図1.2.3A 400m標準トラック(半径36.50m)の形と寸法(単位はm)」という意味です。

2015年3月23日

アニメ デュラララ!!×2承 第6話


成田良悟(原作) 2010年 MBS

解析概論 十二進法 忌み数字
 ロシア人女性の殺し屋ヴァローナが、まるで雑誌をめくるようにあの難しい解析概論を読みながら、13がなぜ不吉な数と言われるのかを説明していました。
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諸説存在します。最後の晩餐、ユダの座った13番目の席が有名。ただし、キリスト教だけが原典にあらず。
北欧の神々の伝承、12人の神による調和、13番目に現れたロキが調和を乱した。
古代、12進法を使っていた国々、13番目は12の調和を破壊、忌み数字。
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 1, 2, 3, 4, 6, 12と約数の多い12は調和を意味する数とされていたため、その12に1を加えた素数13は調和を乱すと考えられていたようです。この13は忌み数または忌み数字、英語ではbaker's dozen, devil's dozen, witch's dozenとも呼ばれています。
 ヴァローナが読んでいた解析概論は、日本の数学界ではバイブルともいえる本で、日本初の世界的数学者である髙木貞二が書いたものです。大学の理系の教科書としてよく使われていて、第1版は1938年発行、私は1975年の第17刷を持っています。このアニメのようにとてもペラペラとめくりながら読める本ではありません。表紙が緑色がかっていたので、改訂第3版軽装版だと思われます。内容がはっきりわかるほど細かく描写されていたので、思わずそのページを調べてしまいました。P.16-17をめくって24-25、28-29をめくって30-31、144-145をめくって304-305をめくって328-329でした。つまり、めくっているのにページ数は飛んでいました。こんな細かいところまで調べるような人は他にいないだろうと思ったら、こちらにいました(笑)。

2015年3月1日

ドラマ スペシャリスト3

ハノイの塔

上からアルファベットの文字が"cosidemple"と書かれてある10段のハノイの塔の操作中、51手目の状態が"simple code"になり、これが事件解決ためのヒントになるという話です。

n段のハノイの塔の最小移動回数f(n)は2^n-1になりますが、まずこれを求める漸化式の解き方が画面に出ます。n段の移動には、①まずn-1段を移動する(f(n-1)手)、②一番下のn段目を移動する(1手)、③またn-1段を移動する(f(n-1)手)という操作になるので、漸化式はそれらの和で次のようになります。
f(n)=2f(n-1)+1
これを解くと、
f(n)=2^1(2f(n-2)+1)+1
=2^2(2f(n-3)+1)+2+1
=2^3f(n-3)+2^2+2+1

=2^(n-1)f(1)+2^(n-2)+2^(n-3)+…+2+1
=2^(n-1)+2^(n-1)-1
=2^n-1
よって、f(n)=2^n-1となりますが、ドラマでは主人公がこの式を知っていたようで、2^n-1から紙に書き始めます。
2^n-1
2^10-1=2×2×2×…×2×2-1
=1024-1
=1023
その後、なぜかいきなり
2^5+2^4+2^1+2^0
51
と計算して、「51手」とつぶやき、10段のハノイの塔を実際に操作して、51手目の状態が"simple code"になることに気がつきます。
ただ、これは実際に操作しなくても計算で次のように求めることができます。
f(1)=1, f(2)=3, f(3)=7, f(4)=15, f(5)=31, f(6)=63
ですから、51=f(6)の途中=f(5)+20=f(5)+1+19=f(5)+1+f(5)の途中=f(5)+1+f(4)+4=f(5)+1+f(4)+1+3=f(5)+1+f(4)+1+f(2)
すなわち、まず31手で上の5段を移し、次の1手(32手目)で6段目を移し、次の15手(47手目まで)で上の4段を移し、次の1手(48手目)で5段目を移し、あと3手(51手目まで)で上の2段を移します。これでどんな状態になるかを分かり易く右図にまとめてみました。(WolframAlphaで"Tower of Hanoi 10-disk 51 step"と入力したらちゃんと51手目の状態が表示されました。WolframAlphaはすごい!)

それにしても,主人公がなぜ2^5+2^4+2^1+2^0を理解したのかが疑問に残りました。

2015年2月11日

小説 φは壊れたね (その2)

森 博嗣 2007年 講談社 
φ 関数 空集合 

以前の同じ小説の投稿の第2弾です。
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「φっていうのは、何に使う記号ですか?」鵜飼は西之園と国枝を見てきいた。
「決まっていません」西之園が答える。「よく使うというと、関数の名前かしら」
「空集合」国枝が珍しく口をきいた。
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 よく使うということはないですが、φ関数というものがあります。nを正の整数としてφ(n)は、n以下の整数のうちnと互いに素な(1以外に公約数を持たない)ものの個数を表します。例えば、4以下の正の整数で4と互いに素なものは1と3の2個なので
φ(4)=2
となります。n=12なら、12以下で12と互いに素なものは1と5と7と11の4個なので
φ(12)=4
となります。nが素数pのときは、1からp-1までのすべてがpと互いに素なので
φ(p)=p−1
となります。
 素数も含めて正の整数すべての場合でφ(n)を求める式は少し難しいですが、分かりやすい式はこちらにあります。簡単に言えば、nを素因数分解したときの素因数をp(1)、p(2)、…p(k)としたとき、nと(1-1/p(i))をすべて掛け算したものになります。例えば、4=2^2なのでp(1)=2だから、
φ(4)=4(1-1/2)=2
となります。n=12なら、12=2^2*3なのでp(1)=2、p(2)=3だから、
φ(12)=12(1-1/2)(1-1/3)=4
となり、上の結果と一致します。これなら大きな数でも求められますね。例えば、n=480のとき、480以下の整数のうち480と互いに素なものをすべて数えるのは大変ですが、この式を使うと、480=2^5*3*5なので、
φ(480)=480(1-1/2)(1-1/3)(1-1/5)=128
と容易に求められます。

2014年12月29日

小説 1Q84

平均律
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 『平均律クラヴィーア曲集』は数学者にとって、まさに天上の音楽である。十二音階すべてを均律に使って、長調と短調でそれぞれに前奏曲とフーガが作られている。全部で二十四曲。第一巻と第二巻をあわせて四十八曲。完全なサイクルがそこに形成される。
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 ふかえりが天吾に聞かれて、お気に入りの音楽はバッハの『平均律クラヴィーア曲集』だと答えた場面です。ここでの「天上」とは「最高の」「この上ない」という意味だと思われます。なぜ数学者にとってそんなに良い音楽なのでしょうか。
 平均律は、1オクターヴを均等な周波数比で12等分した音律、すなわち十二平均律を意味する場合が多いようです。すると1オクターヴ上の音は周波数が2倍になるので、均等に分けると1つの半音につき周波数は「12√2=12乗根2」倍になります。音階の分類が、「公比が累乗根を使って表される数である等比数列」で表されているからでしょうか。このことが数学者が歓喜するほどのことだとは思えないのですが…。それとももっと他に意味があるのでしょうか。

2014年11月25日

ドラマ すべてがFになる

16進法
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16進法でFFFFは65535になる。
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 n進法(n進表記/n進記数法)の4桁の数の表記が"abcd (n)"のとき、10進法で表すと、
a×n^3+b×n^2+c×n+d×1
となります。
①例えば
10進法で使う数字は0,1,2,3,4,5,6,7,8,9なので、
4桁の数の表記が"2345"のとき、10進法で表すと、
2×10^3+3×10^2+4×10+5×1=2345
となります。
②例えば
2進法で使う数字は0,1なので、
4桁の数の表記が"1011 (2)"のとき、10進法で表すと、
1×2^3+0×2^2+1×2+1×1=8+0+2+1=11
となります。
③さて
16進法で使う数字(文字)は0,1,2,3,4,5,6,7,8,9,A,B,C,D,E,Fで、この場合、F=15なので、
4桁の数の表記が"FFFF (16)"のとき、10進法で表すと、
F×16^3+F×16^2+F×16+F×1=15×16^3+15×16^2+15×16+15×1=65535
となります。
 ところで、色の分類も16進法で表されます。例えば黒は#000000、白は#FFFFFFとなります。これをあてはめれば、すべてがFになると、すべてが白になるということになります。
 n進法と似たような言葉にp進数(pは素数)がありますが、これは急に難しいお話になります。p進数は「小数部分が有限で、整数部分が無限に続く数」をいいます。例えば2進数の場合、
    ……111111.=-1
となります。なぜなら、2進法で1+1=10なので、両辺に1を加えるとすべてが繰り上がって、
    ……000000.=0
となるからです。


2014年10月19日

小説 お任せ!数学屋さん

台形の加重平均 他多数
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 r=(1-n)p+nq
「台形には必ず平行な2辺が存在するよね。いわゆる上底と下底。その上底と下底の間に、さらにもう1本平行線を引く場合に使う公式なんだよ。」
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 第1章(問1)では計算が丁寧だったのに、第2章(問2)ではかなり公式の導出やあとの計算が端折られていて、分かりやすい図はいつ出てくるのかと思ったら結局出てきませんでした。あのままでは分かりづらいので、図と計算をここにメモしておきましょう。
まずP.99の公式の導出。右図でAB//DFとします。△DEN∽△DFCよりn:1=EN:FCなので、
 n:1=(r-p):(q-p)
 r-p=n(q-p)
 r=p+nq-np=(1-n)p+nq
次にP.105の2次方程式の計算。
 {45+(15n+45)}×AM÷2={(15n+45)+60}×MB÷2
 {45+(15n+45)}×AM={(15n+45)+60}×MB
 {45+(15n+45)}×70n={(15n+45)+60}×70(1-n)
 {45+(15n+45)}×n={(15n+45)+60}×(1-n)
 15n^2+90n=15n+105-15n^2-105n
 30n^2+180n-105=0
 2n^2+12n-7=0
それにしても、中2の生徒に中3で習う相似、2次方程式、平方根、解の公式などの話をしたら、当然魔法のように聞こえるでしょうね。読んでいてぜひほしいと思った学校のグラウンドの図も作っておきました。

2014年5月6日

小説 陽気なギャングの日常と襲撃

仕事(ベクトルの内積)
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 力が働いて物体が移動したときに、物体の移動した向きの力と移動した距離との積を、力が物体になした仕事という。
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物理でいう仕事(単位N・m=J)というのはベクトルの内積にあたります。ベクトルaとベクトルbの内積はab=|a||b|cosθで定義されます。物体にかけた力を表すベクトルaと移動を表すベクトルbが同じ方向の場合はθ=0なのでcosθ=1ですから、仕事=内積はab=|a||b|となりますが、同じ方向でない場合、移動方向にかかる力は|a|cosθとなりますから、仕事=内積はab=|a||b|cosθとなります。私が高校のときの数学の教科書には定義式以外に説明がなかったので、それが何を意味するのか長い間分かりませんでした。
 ベクトルの掛け算には内積と外積があります。内積はベクトル・ベクトル=スカラー(定数)になりますが、3次元での外積はベクトル×ベクトル=ベクトルになります。ベクトルの外積が表す物理量のひとつとして力のモーメントがあります。力のモーメントは回転運動を与える力の能率のことで、回転軸から力を加える点を結ぶベクトルをa、加える力を表すベクトルをbとするとき、その大きさは|a×b|=|a||b|sinθで、その方向はabに向かって近づく回転で右ネジが進む方向です。N・mという単位は仕事と同じですが、異なるものです。
 ちなみに広義の外積は2次元でも定義できて、2つの平行でないベクトルが作る平行四辺形の面積になります。成分で見てみると、a=(a1, a2), b=(b1, b2)のとき、外積は
|a×b|=|a1b2-a2b1|
になります。これを使うと3点を結ぶ三角形の面積が簡単に求められることはよく知られてます。

2013年8月6日

小説 白夜行

空間図形 平面 直線
 主人公が家庭教師に数学を教わる場面です。(文庫本ではP239)
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 空間上の二つの面が交わった時に出来る直線の式を求める、という問題に雪穂は取り組んでいた。解き方は教えてあるし、彼女も理解している。彼女が持っているシャープペンシルは、殆ど動きを止めることはなかった。
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 この問題の解き方はいくつかあります。
①2つの平面の方程式を連立方程式と考え、2つの変数を他の1つの変数で表してそれらをつなぐ。
②2平面の共有点を2つ求め、その2点を通る直線を求める。
③2平面の共有点を1つ求め、その1点を通り、2平面の法線ベクトルの外積を方向ベクトルとする直線を求める。
 文中に「解き方は教えてあるし」とありますが、どの解き方なのでしょう。すべて教えていたのなら上出来だと思います。山の頂上へ行くのにいくつかの道があるのと同じように、数学の問題の解答を得るのにいくつかの解き方があるということも教えてほしいものです。
 ストーリーは面白かったのですが、この作者の他作品と比べると、かなり性描写が露骨でした。どうでもいいことなのでしょうが、文庫本で860ページもあるのになぜ上下巻に分けなかったのか不思議です。

2013年7月11日

小説 浜村渚の計算ノート

四色問題 0 フィボナッチ数列 円周率
 主人公の数学天才少女は「算法少女」という小説を想起させます。一度読んでみてください。さて、文中にいくつか説明なしのパロディ(のようなもの)がありました。
◆黒い三角定規
 「青い三角定規」は、70年代に青春ドラマの主題歌「太陽がくれた季節」を大ヒットさせたフォークグループ(数学とは関係がない)。
◆ドクター・ピタゴラス
 ピタゴラスは、古代ギリシャの数学者・哲学者。ピタゴラス教団(今でいうカルト教団)の教祖で、教団が否定していた無理数の存在を口外した者を溺死させたといわれている。
◆『稲石昇平の青春の夢』
 「クロネッカーの青春の夢」は、ドイツの数学者クロネッカーの数学予想のことで、日本の数学者高木貞治によって正しいことが証明された。
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 また、パロディではありませんが、説明がなければ分からない文章がありました。
■「またフィボナッチ数列か……自然界だけではなく、殺人事件にもよく出てくる数列だ。」
 フィボナッチ数列は、このブログだけでもダビンチ・コードと探偵ガリレオに登場しています。
■「カルダノの公式です。立方完成まではなんとか自分でできたんですけど、…」
 中学数学の教科書には平方完成(2次式を(x-p)^2+qの形に変形すること)を使って二次方程式の解の公式を導く方法があります。三次方程式の解の公式を導くには、立方完成(3次式を(x-p)^3+qx+rの形に変形すること)という方法を使います(導出は他のサイトで簡単に見つけられます)。
■「円周率が、3.05より大きい数であることを、証明せよ」
 これはこのブログの以前の投稿にも書きましたが、東大の2003年入試問題です。
■「バーゼル問題の解を使ってもいいですか」
 バーゼル問題とは、オイラーが証明した等式、
Σ(1,∞) 1/(n^2)=1+1/(2^2)+1/(3^2)+1/(4^2)+・・・・=(π^2)/6
のことで、ゼータ関数ζ(s)のs=2のときの値になります。
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 ところで、この小説は数学の話題がたくさん出てきてその部分は面白いのですが、設定があまりにも荒唐無稽なので、小説なのに漫画を読んでいるみたいでした(実際漫画化されましたが…)。フィクションなのでそれでもいいのですが、自分は整合性のあるものの方がが好きです。これは個人の好みの問題ですね。表紙は可愛いですが、ストーリーは殺人が多すぎるので、あまりお勧めできないです。

2012年9月8日

小説 左京区七夕通東入ル

ピタゴラスの定理
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 新しい定理を発見した場合はその本人の名前がつけられることが多いという話を聞いた。ピタゴラスの定理とかオームの法則とか、いくつかそれらしいものは思い当たる。
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 理学部数学科の学生が準主役の話なのに、数学の用語がほとんど出てきませんでした。主役が文学部の学生だからかも知れません。ピタゴラスの定理は、ピタゴラスが発見したのではないという説が有力です。もっと以前から知られていたとか、ピタゴラスの弟子が発見したとか言われています。
 私も自分でちょっとした結果を得たことがあるのですが、他に同じ内容を見たことがないので勝手に自分の名前を付けて○○の定理と呼んで悦に入っています。
○○の定理
 zがexp(-θcosθ/sinθ)(cosθ+isinθ)という形の虚数のときにz^zは実数になり、その値はexp((-θ/sinθexp(-θcosθ/sinθ))である。
 もし、同じ結果をどこかで見られたことがある方はお知らせください。

2012年8月23日

小説 マスカレード・ホテル

東野圭吾  2011年  集英社

緯度 経度

連続殺人の次の場所と予告された一流ホテルで,警察と従業員が協力して事件の解決に奔走する話です.
「三番目の数字で検索していただけますか」尚美の声は震えた。
地図の真ん中には、ホテル・コルテシア東京の文字があった。
「次の犯行現場がこちらのホテルだということは明白でしょう?」
犯人は次の犯行現場を緯度・経度で予告しました。実際に小説に出てきた数字で場所 (35.678738, 139.788585) を調べたら、東京都首都高速9号深川線と隅田川の交差している地点でした。もちろんフィクションですから実際にホテルはありません。

地球はほぼ球であるとして考えましょう。下図の点Pの緯度 (Latitude) は、「球の中心とPを結ぶ線分」と赤道面とのなす角(図のφ)で[-90, 90]。経度 (Longitude) はグリニッジ子午線とPを通る子午線とのなす角(図のλ)で[-180, 180]。ただし、子午線とは北極と南極を球面上で結ぶ半円のことで、北=子(ねずみ)と南=午(うま)が語源です。

<座標(緯度,経度)の例>
◇座標(51.477222, 0)=グリニッジ天文台(Royal Greenwich Observatory)
◇座標(0, 0)=アフリカのガーナ南約500kmの大西洋上、グリニッジ子午線(本初子午線)と赤道の交点。
◇座標(0, 180)=ハワイの南西約3000kmの太平洋上、日付変更線と赤道の交点。
◇座標(34.649395, 135)=明石市立天文科学館
◇座標(-34.649395, -45)=明石市立天文科学館と正反対の地球の裏側で、南米ウルグアイの西約1000kmの大西洋上。

球座標 (Spherical Polar Coordinates) または3次元極座標  (3D Polar Coordinates) は、普通は左図のように (r,θ,φ) で表します。xy平面は赤道面にあたります。θは極角といいますが、θ=90°-緯度 なので余緯度とも呼ばれます。φは方位角といい、経度にあたります。直交座標との関係は x=rsinθcosφ,  y=rsinθsinφ,  z=rcosθとなります。

数学でよく使う直交座標は、1637年に発表された『方法序説』において平面上の座標の概念を確立したルネ・デカルト (René Descartes) の名をとってデカルト座標 (Cartesian coordinates) ともいいます。

2012年7月22日

小説 φは壊れたね

相関係数 空集合
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「ちょっと寄り道していっても、良いですか?」
「どこへ?」
「いえ、通り道ですけれど、途中で、ちょっとだけ」
「どこ? 言いなさい。なにか後ろめたいんだ」
「あれ、どうして、わかるんですか?」
「貴女の顔、見ていたらわかる」
「顔、見てないじゃないですか」西之園は言った。国枝はずっと前を向いたままだ。
「声で、顔がわかる」
「へえ……、相関係数がかなり落ちそうですね。それは」
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 相関係数は、2つのベクトルの内積をそれらの大きさの積で割ったものですから、2つのベクトルのなす角の余弦(cosθ)になります。-1≦cosθ≦1なので、1に近ければ相関係数は高く、-1に近ければ低いということになります。もう少し前後を読まないと分かりにくいかもしれませんが、ここでの「相関係数」という言葉の使い方はちょっとおかしいと思いました。「かなり落ちる」といっても-1より小さくはなりません。ここでは
「へえ……、私の声と顔は相関係数が高いんですね」
のほうが適切ではないでしょうか。
 φという文字がよく使われる例として、黄金比の値φ、オイラーのφ関数があります。大文字のΦは標準正規分布の累積分布関数としてよく使われます。酷似していますが、ロジスティック分布の累積分布関数はロジスティック関数になります。画像検索してみてください。
 また、"Phi"は米米CLUBの10枚目のアルバムのタイトルでもありますね。
 それにしてもこの小説の登場人物は、戸川(あさかわ)とか、加部谷(かべや)とか、海月(くらげ)とかで読みにくいです。

2012年5月6日

小説 永遠の0(ゼロ)

百田尚樹 2006年 太田出版

0 皇紀2600年
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なぜ「零戦」と呼ばれたか、ですか。
零戦が正式採用となった皇紀2600年の末尾のゼロをつけたのですよ。
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 「皇紀」は「神武天皇即位紀元」の略称で、神武天皇が即位したとされる年を元年とする年号であり、西暦+660年となります。したがって、皇紀2600年は西暦1940年(昭和15年)にあたります。
 数としての0の概念はインドで確立され、アラビアからヨーロッパに広まりました。日本では普通、自然数というと正の整数を意味し、0を含みませんが、0を含めて自然数とする場合もあります。0のもう一つの重要な役割は、位取り記数法で空位を示す記号として使われることです。このおかげで計算がずいぶん楽になっています。

2012年5月3日

小説 陽気なギャングが地球を回す

6÷3   a=b⇒2=1
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「6万円を3人の強盗で分けると2万円になる」
「割り算というのはギャングの分け前を計算するためのものなんだよ」
a=b
a^2=ab
a^2+a^2-2ab=ab+a^2-2ab
2a^2-2ab=a^2-ab
2(a^2-ab)=a^2-ab
2=1
「ゼロで割るってことはどういうことか」
「盗んだお金を誰も手に入れられないってことね」
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 「0で割ってはいけない」理由として、極限を考えるとか、解が存在すると矛盾がおこるとか、いろいろと形式的な解説はよくありますが素直に納得しにくいものです。実はこれらはすべて一貫した考えに基づけば簡単に説明できます。それは「何かを求めるために意味があるから計算をする」ということです。
 割り算には「等分除」と「包含除」2つの意味があります。「等分除」は、例えば6個の物を2人で分けるとか3人で分けるなど、文字通り「等分すること」です。ただしこれは割る数が自然数(正の整数)に限られます。一方「包含除」は、例えば6の中に1/2はどれだけ含まれているかというように、割る数がどれだけ割られる数に含まれているかという意味で、この場合は割る数が自然数とは限りません。
 0で割るということはこれら2つの意味の両方ともあてはまりません。0人で分けることもしないし、0がどれだけ含まれているかなど考える必要はないのです。だから「0で割れない、または割ってはいけない」のではなく、何かを求めるために意味のある計算として「0で割るということはしない」のです。

2011年12月27日

小説 天地明察


冲方 丁 2009年 角川書店

和算/算術/算学 関孝和 勾股弦

作品中に問題が3問あり、その都度先を読まずに解いてみました。

①辺の長さがが9, 12, 15の直角三角形に2点で内接する半径の等しい二つの円が互いに外接しているとき、円の直径を求める問題。

これは半径をr、一方の円の接線の長さをxとでもおいて連立方程式をつくれば正解の30/7はすぐに出たのですが、他サイトに他の解法がいろいろ紹介されていました。

②大正方形と小正方形が図のように重なっていて、2つの正方形の対角線の長さの比が30/7のとき、それぞれに内接する小円と大円が重なっている部分を図のように二等分する線分の長さを求める問題。

これは一見して2つの正方形の対角線の長さの比は√(2):1のはずなのでおかしいと思ったら、やはりその後に問題が間違っていたことが書かれていました。因みに√(2):1で計算すると、この長さは小円の半径を1とした場合、√(2)-1になります。ただこれは算術の名人に出すにはあまりにも簡単です。

③15個の大きさの異なる円があり、それらの周の長さはある数列になっていて、小さい順にa(1)からa(15)としたとき、a(1)+a(2)=10, a(5)+a(6)+a(7)=27.5, a(11)+…+a(15)=40のとき、a(1)を求める問題。

これは等差数列か等比数列かと思って解こうとしましたが正解が出ないので他サイトを検索してみたところ、この数列の一般項をnの2次式と置いて行列を用いて解いていました。ただし、この出典はある神社の算額に実際に書かれていた問題で、小説ではこの値を変えたものでした。ところがオリジナルの問題ではきちんと解が得られるのに、この小説で変えられた値で解くとうまくいかないようです。詳細はこちら。

映画では間違いがなければいいのですが。

2011年11月13日

小説 神様のカルテ

夏川草介 2009年 小学館

一+止=正 1+4=5
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(主人公の名前について)「一に止まると書いて、正しいという意味だなんて、この年になるまで知りませんでした。でもなんだかわかるような気がします。人は生きていると、前へ前へという気持ちばかり急いて、どんどん大切なものを置き去りにしていくものでしょう。本当に正しいことというのは、一番初めの場所にあるのかもしれませんね。」
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この意味についてとは断っていませんが、「一度止まって考えよ。そうすれば正しい答えが得られる。」という意味の内容を述べている部分もありました。
またこう考えることもできます。
1+4=5
漢字を使用する国で5ずつ数えるのに、「正」という字を書いていく方法はよく使われますが、これが画線法(かくせんほう)"Tally Marks"と呼ばれることはあまり知られていないようです。欧米ではI, II, III, IIIIの次に全体に斜線を入れて5を表し、南米ではまず口(四角)を書いてその中に斜線を入れて5を表すそうです。

2011年11月5日

映画 猿の惑星:創世記(ジェネシス) Rise of the Planet of the Apes

ハノイの塔 Tower of Hanoi (=Lucas Tower) 

薬剤の投与で賢くなった猿が「ハノイの塔」(映画の中ではLucas Tower)というパズルをすばやく仕上げる場面があり、ディスクが4枚のときの最小移動回数は15回という内容の台詞がありました。

n枚のディスクを移動させるには、n-1枚をまず他の場所に移動させて、次に最下部の1枚を目的の場所に移動させ、いったん移動させたn-1枚をもう一度最下部の上に移動させなければならないので、n枚のときの最小移動回数をa(n)とすると、
a(n+1)=a(n)+1+a(n) すなわち a(n+1)=2a(n)+1
という簡単な漸化式が成り立ちます。これを解くと、
a(n)=2^n-1
となるので、n=4の場合の最小移動回数は2^4-1=15となります。

余談ですが、猿の保護施設職員で猿をいじめる役があのハリーポッターのドラコ・マルフォイ役の俳優であることを知らなかったので、見ているときに気付いたときは驚きました。