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2019年6月29日

TVスポーツ 日本陸上競技選手権

NHK TV放送

2019年度日本陸上競技選手権が6月27-30日に福岡で行われ,そのTV中継の中で男子100m決勝の後に上のグラフが表示されました.1位のサニブラウン選手(記録10.02秒)と,2位の桐生選手(記録10.16秒)のスタート後の距離とそのときの速度を表していて,赤色が1位,黄色が2位の走りを表しています.

近似関数 (by GeoGebra)
<1位のグラフ(赤色)の特徴>
頂点は(65, 42.7)
ほぼ左右対称
2次関数よりは3次関数のカーブに近い

100mは距離が短いので,トップスピードになったらそのままゴールまで行くのかと思っていましたが,そうではなく,ピーク前に速度が上がったのと同じぐらいの割合でピーク後の速度が下がっていることは意外でした.

このグラフをGeoGebraを使って関数で表してみました.すると3次関数よりも3.1次関数の方がこのグラフに近いことが分かりました.距離を$x$,速度を$y$としたときの方程式は次のようになります.

10≤$x$≤65のとき,$y=-0.00005(-x+65)^{3.1}+42.7$
65≤$x$≤100のとき,$y=-0.00005(x-65)^{3.1}+42.7$

日本陸上競技連盟(JAAF)公式サイトには桐生選手が当時の日本記録9.98を出した時のグラフがあります.これもほぼ65m地点を中心に左右対称になっています.やはり100mを10秒ぐらいで走るにはものすごいスピードが必要ですが,ピークの65m地点を過ぎてそのままトップスピードを維持することは非常に難しいことのようです.

JAAF

2018年3月30日

テレビ番組 ちちんぷいぷい 桜開花予想 

2018年3月28日放送 MBS

指数関数・対数関数

テレビ番組「ちちんぷいぷい」で桜の開花日を予想する数式が登場しました.

数式を考察する前に,次の基本事項を押さえておきましょう.
①桜は夏に花芽(かが)ができ,休眠を始める.
②秋冬の気温の影響を受けながら休眠した後,冬のある日に休眠から覚める(「休眠打破」という).
③花芽は休眠打破の後,寒ければ小さく,暖かければ大きく生育し、ある生育量に達すると開花する.

番組では「AI技術 VS 気象予報士」という設定で,どちらがより正確に開花日を予想するかを勝負するというものでしたが,よく調べてみたら,どちらも大阪府立大学の教授らによって考えられた数式が元になっていて,それに他の要素を加味して補正することで予想に違いが出ることが分かりました.

番組で登場した数式  (1)
番組で登場した式(1)は気象庁でも使われていた式で,式(2)は大阪府立大学の教授らの論文(2017年)の中の式です.y=exp(x)は$y=e^x$と同じ意味で,ネイピア数eを底とする指数関数です.数字/文字の違いはありますが,(1)と(2)は基本的には同じ式です.

式中に登場する温度(単位:K)は絶対温度=摂氏温度+273.2という値になります.従って,絶対温度の288.2Kは摂氏でいうと15°Cになります.以下はその教授らの論文からの抜粋です.
温度変換日数(DTS = the number of days transformed to standard temperature)とは,ある一定の温度条件で1日間置かれたときの植物の生育過程が,あらかじめ決められた標準温度$T_s$(K)の下での条件に変換すると何日分の生育過程に相当するかを表す指数である。日平均気温が$T_{ij}$(K)であるi 年のDOY=day of year(または通日)j における温度変換日数$(t_s)_{ij}$(日)は,以下の式のように表すことができる。$$(t_s)_{ij}=\exp \left\{ \frac{E_a(T_{ij}-T_s)}{R\ T_{ij}\ T_s} \right\} \tag{2}$$ここで$E_a$は生育の温度に対する応答の特性を代表する温度特性値(J mol-1),$R$ は普遍気体定数(8.314 J mol-1 K-1)である。本研究では,青野・守屋(2003)にならい,標準温度$T_s$を15℃(288.2 K),$E_a$を70 kJ mol-1 として,ソメイヨシノの開花日の推定モデルに一貫して使用した。 
開花日の推定の際には,地点ごとに定められた適切な起算日$D_2$から式(2)の$(ts)_{ij}$を積算し始め,その値があらかじめ定められた特定の値23.8($DTS_2$)に達した日を推定開花日とする。起算日$D_2$は3つの地理的・環境的変数を使って,比較的簡単に地点ごとに計算できる。起算日$D_2$は次の式(3)で推定される。
$D_2=136.765-7.689Ψ+0.133Ψ^2\\ \hspace{ 40pt } -1.307\ln L+0.144T_F+0.285{T_F}^2 \tag{3}$
ここでΨは緯度(°N),Lは海岸からの距離(km),TFは1, 2, 3 月の平均気温の平年値(℃)である。なお,海岸沿いの地点の場合,Lには1kmを適用する。
なぜ海岸沿いなのに1kmを適用するのかというと,式(3)のlnLは自然対数logeLを表しますから,Lが1未満だとlnLの値は急激に$-∞$に向かい,現実的でないからだと思われます.さて,式(1)を簡単にすると,$$\exp \left \{ \frac{9500(t-288.2)}{288.2t} \right \}$$
式(2)に定数を代入し,$T_{ij}$をtで表すと, $$\exp \left \{ \frac{8420(t-288.2)}{288.2t} \right \}$$となります.分子の係数が,式(1)は9.5×103=9500,式(2)は70000/8.314≒8420なので少し異なりますね.

この式で休眠打破(起算日)後の1日当たりの生育量を求め,積算して23.8になった日が開花日になります.極端な例でいうと,起算後の毎日の平均気温がずっと15℃だったら23.8日後に開花するということになります.この23.8という値は大量の過去のデータをもとに算出されたものだそうです.

この番組の最後に,勝負に負けた方からの面白いコメントがありました.「桜の気持ちもありますからね」

[Reference]
自発休眠期の気温を考慮したソメイヨシノの開花日の簡便な推定法
青野靖之・村上なつき(2017年)
さくら開花予想方法について
気象庁
桜の開花予想、国が認めた“魔法の公式”
https://withnews.jp/article/f0180319001qq000000000000000W08e10701qq000016960A

2017年6月11日

テレビ番組 とくダネ! 中国の過酷すぎる受験対策

2017年6月9日放送 約940万人が挑む一発勝負
中国の全国大学統一入試は「高考(ガオカオ)」と呼ばれ、約940万人が受験に臨み,2800校中超一流と呼ばれる80校を目指します.15校が志望でき、ランクごとに5校ずつ選べます.学力のみの一発勝負で,試験の成績によって入学校が決まり,成績トップ者は新聞一面で紹介されます.大学ごとの入試は行なわれません.東京大学の倍率約3倍に対して、北京大学の倍率は150倍にもなります.(番組情報より)
今年広東省で出題された数学の問題の前半に出てきた比較的易しい問題がひとつ紹介されていました.少し分かりにくい問題文でしたが,要するに太極と呼ばれる図形の黒い部分の面積の,外接する正方形の面積に対する割合を求める問題です.正解の選択肢は
A 1/4  B π/8  C 1/2  D π/4

東大の建築学科卒で数学に関する著作もある司会の女性タレントがこの問題の正解をすぐに答えていました.「どう考えても1/4じゃないから…,Bですよね」 つまり計算はせずに,半分よりは小さく,1/4よりは大きいからその間のπ/8を正解にしたようです.

一応確認してみましょう.円の半径をrとすると,黒い部分は白い部分と全く同じ形なので円の面積の半分で$\pi r^2/2$,正方形の面積は$(2r)^2=4r^2$,前者を後者で割ると$\pi /8$になります.

テレビの情報番組やクイズ番組などで数学の問題が出るときは,このようにすぐに正解が得られる問題しか出てきませんね.特にクイズ番組では,ただ覚えている知識を答えるだけの問題が多いので,物足りなく感じます.

他の問題も気になったので探してみました.2017広東省数学問題と解答です.上の問題の原文も見つかりました.「理科数学」は「理系数学」という意味です.せっかく見つけたので少し時間のかかる最後の記述式問題も紹介しておきます.
[理科数学 2] (上の問題)如图,正方形ABCD内的图形来自中国古代的太极图正方形內切圓中的黑色部分和白色部分关干正方形的中心成中心対称.在正方形内随机取一点,剣此点取自黒色部分的概率是.
[理科数学 23] 己知函数$f(x)=-x^2+ax+4$, $g(x)=|x+1|+|x-1|$.
(1) 当$a=1$时,求不等式$f(x)\ge g(x)$的解集.
(2) 若不等式$f(x)\ge g(x)$的解集包含$[-1, 1]$,求$a$的取値范围.
[理系数学 23](和訳)関数$f(x)=-x^2+ax+4$,$g(x)=|x+1|+|x-1|$がある.
(1) $a=1$のとき,不等式$f(x)\ge g(x)$を解け.
(2) 不等式$f(x)\ge g(x)$の解が$[-1, 1]$に含まれるとき,$a$の取り得る値の範囲を求めよ.

正解は  (1) -1≦x≦(-1+√17)/2   (2) -1≦a≦1

[Reference]
2017年广东高考真题及答案解析
http://www.gaokao.com/e/20170607/59375d1f5f355.shtml