線対称
幼い頃に発達障害と診断されながらも,自分の特性と向き合いながら裁判官になった安堂清春が,理解ある人たちに囲まれて,さまざまな事件に取り組んでいくという話です.
「被疑者のえーと、なんて名前だったっけ?」
「宗春美さんです」
一枚紙の令状の映像記憶がたちまち脳裏に浮かび、そこから氏名を探すのは難しい作業ではなかった。そのとき突如、脳があらぬ方向に走り出した。この被疑者の名は見えない一本の縦線を中央に引けば、見事な線対称になるではないかと。P94
「その頃の清掃員なら、たぶん森さんだよ。確か、幸いに市場の市と書いて森幸市さん」
聞かなければよかったと思った。線対称の氏名が性懲りもなく、そわそわを呼び寄せようとしていた。P145
この物語で線対称という用語が何回も登場しました.平面図形をある直線で切断したときに分かれた2つの部分が鏡に映したようになることをいいます.
線対称な姓といえば,田中,中山,山田などいっぱいありますね.ASD (自閉スペクトラム症) やADHD (注意欠如多動症) の特性のひとつとして,左右対称に強くこだわることがあるそうです.
空間図形で線対称にあたるものは面対称になります.立体をある平面で切断したときに分かれた2つの部分が鏡に映したようになります.
具体的な形を想像するのは難しいですが,n次元空間内で,曲がっていない(n-1)次元空間のことを超平面といいます.なので,n次元図形を超平面で切断したときに分かれた2つの部分が鏡に映したようになることは超平面対称といいます.また以上まとめて鏡映対称ともいいます.
さて,もうひとつ中学や高校でも学習しない回転対称というものがあります.
平面図形の回転対称
図形自身が (360/n)° 回転で元の図形と重なるものをn回対称といいます.言い換えると,1回転するまでに元の図形とn回重なればn回対称です.
例えば,平行四辺形は180°(=360/2),360°回転で元の図形と重なるので,回転対称としては2回対称であるといえます.
正三角形は120°(=360/3),240°,360°回転で元の図形と重なるので,3回対称ということになります.
正方形は90°(=360/4),180°,270°,360°回転で元の図形と重なるので,4回対称です.
円は何度回転しても元の図形と重なるので無限回対称ですが,この場合は連続回転対称であるともいいます.
空間図形の回転対称
ある軸の周りに (360/n)° 回転で元の図形と重なるものをn回対称といいます.言い換えると,1回転するまでに元の図形とn回重なればn回対称です.
例えば正6面体 (立方体) の場合は、回転軸が3通りあります。
①回転軸が対面の中心を通る場合
90°(=360/4),180°,270°,360°回転で元の図形と重なるので4回対称です.
②回転軸が対辺の中心を通る場合
180°(=360/2),360°回転で元の図形と重なるので2回対称です.
③回転軸が対頂点を通る場合
真上から見ると平面的には正6角形ですが,立体的には中央の図が異なりますから、60°ではなく,120°(=360/3),240°,360°回転で元の図形と重なるので3回対称になります.
| 対頂点を通る回転軸 |
| 真上から見た図 |
円柱は底面の中心を結ぶ直線を軸とすると無限回対称なので,連続回転対称でもあります.
ところで,この物語は読後感が良かったですね.安堂と小野崎の最後の会話にホッコリしました.
[参考]
















