2015年3月26日

小説 風が強く吹いている


三浦 しおん 2006年 新潮社
楕円
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ひさしく覚えなかった高揚が、走(かける)の心と体を震わせた。
だがここは、永遠の楕円を描く競技場のトラックではない。
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 陸上競技のトラックは楕円(ellipse)というより楕円状(oval)ですね。国際陸上競技連盟(International Association of Athletics Federations = IAAF)の公認トラックは線分2本と半円2個でできていて、線分の長さが84.39m、円の半径が36.50m。円の外側0.30mのところを走って1周400mになるようにしているので、その計算は次のようになります。
84.39×2+2π×36.80=400.00m
 もしトラックが本物の楕円ならどうなるでしょうか。長軸をa、短軸をbとすると楕円の媒介変数表示は
x=acost, y=bsint
となります。公認トラックの端から端+0.3m×2の距離が
2a=84.39+36.80×2=157.99m
なので、この1/2のa=78.995mの長軸を持つ楕円で周長が400mになるものを求めてみましょう。楕円の面積はπabと簡単に求められるのですが、周長は難しい計算になります。媒介変数表示の曲線の長さの公式より
4∫[0 to π/2](Sqrt(a^2(cost)^2+b^2(sint)^2)dt=400
を解けばいいのですが、これは第二種完全楕円積分といって初等的な計算では求められません。そこでグラフ電卓を使って求めると、短軸が46.17mになりました。この楕円を実際のトラックに重ねてみると図のようになります。公認トラックの図はIAAF official websiteから引用しましたが、そこではoval trackとなっていました。図の下のキャプションは、「図1.2.3A 400m標準トラック(半径36.50m)の形と寸法(単位はm)」という意味です。

2015年3月23日

アニメ デュラララ!!×2承 第6話


成田良悟(原作) 2010年 MBS

解析概論 十二進法 忌み数字
 ロシア人女性の殺し屋ヴァローナが、まるで雑誌をめくるようにあの難しい解析概論を読みながら、13がなぜ不吉な数と言われるのかを説明していました。
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諸説存在します。最後の晩餐、ユダの座った13番目の席が有名。ただし、キリスト教だけが原典にあらず。
北欧の神々の伝承、12人の神による調和、13番目に現れたロキが調和を乱した。
古代、12進法を使っていた国々、13番目は12の調和を破壊、忌み数字。
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 1, 2, 3, 4, 6, 12と約数の多い12は調和を意味する数とされていたため、その12に1を加えた素数13は調和を乱すと考えられていたようです。この13は忌み数または忌み数字、英語ではbaker's dozen, devil's dozen, witch's dozenとも呼ばれています。
 ヴァローナが読んでいた解析概論は、日本の数学界ではバイブルともいえる本で、日本初の世界的数学者である髙木貞二が書いたものです。大学の理系の教科書としてよく使われていて、第1版は1938年発行、私は1975年の第17刷を持っています。このアニメのようにとてもペラペラとめくりながら読める本ではありません。表紙が緑色がかっていたので、改訂第3版軽装版だと思われます。内容がはっきりわかるほど細かく描写されていたので、思わずそのページを調べてしまいました。P.16-17をめくって24-25、28-29をめくって30-31、144-145をめくって304-305をめくって328-329でした。つまり、めくっているのにページ数は飛んでいました。こんな細かいところまで調べるような人は他にいないだろうと思ったら、こちらにいました(笑)。

2015年2月11日

小説 φは壊れたね (その2)

森 博嗣 2007年 講談社 
φ 関数 空集合 

以前の同じ小説の投稿の第2弾です。
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「φっていうのは、何に使う記号ですか?」鵜飼は西之園と国枝を見てきいた。
「決まっていません」西之園が答える。「よく使うというと、関数の名前かしら」
「空集合」国枝が珍しく口をきいた。
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 よく使うということはないですが、φ関数というものがあります。nを正の整数としてφ(n)は、n以下の整数のうちnと互いに素な(1以外に公約数を持たない)ものの個数を表します。例えば、4以下の正の整数で4と互いに素なものは1と3の2個なので
φ(4)=2
となります。n=12なら、12以下で12と互いに素なものは1と5と7と11の4個なので
φ(12)=4
となります。nが素数pのときは、1からp-1までのすべてがpと互いに素なので
φ(p)=p−1
となります。
 素数も含めて正の整数すべての場合でφ(n)を求める式は少し難しいですが、分かりやすい式はこちらにあります。簡単に言えば、nを素因数分解したときの素因数をp(1)、p(2)、…p(k)としたとき、nと(1-1/p(i))をすべて掛け算したものになります。例えば、4=2^2なのでp(1)=2だから、
φ(4)=4(1-1/2)=2
となります。n=12なら、12=2^2*3なのでp(1)=2、p(2)=3だから、
φ(12)=12(1-1/2)(1-1/3)=4
となり、上の結果と一致します。これなら大きな数でも求められますね。例えば、n=480のとき、480以下の整数のうち480と互いに素なものをすべて数えるのは大変ですが、この式を使うと、480=2^5*3*5なので、
φ(480)=480(1-1/2)(1-1/3)(1-1/5)=128
と容易に求められます。