以前から数学の話題が頻繁に登場する漫画であることを知っていたのに,なぜかここに書かなかったという作品のひとつです.久しぶりに第1巻を含むいくつかを読んで,ようやく書く気になりました.
理工系大学の世界最高峰である米国のMIT(マサチューセッツ工科大学)を15歳で卒業したが,普通の高校生活を体験したいと,日本の高校に入学してきた燈馬想が,同級生の体育会系水原可奈の協力のもと,次々と難事件を解決していくという漫画です.Q.E.D.はラテン語でQuod Erat Demonstrandum.タイトル通り「証明終了」という意味です.
第1巻/第2話「銀の瞳」
数学の苦手な水原可奈に燈馬想が数学を教える場面です.
燈馬想「だから交点が1になる場合を考えて判別式が0になる値を求めるんです.」問題が掲載されていなかったので推理してみましょう.このころはまだ2人とも高校1年生なので,高校数学Ⅰの問題なら,放物線と直線の共有点が1つ,すなわち接するときの式中の定数を求める問題でしょう.そうだとすれば,「交点が1になる場合を考えて」よりも「共有点が1つになる場合だから」という表現のほうが適切ですね.
水原可奈「じぇんじぇんわかりましぇん」
[簡単な例題] 放物線$y=x^2$と直線$y=ax-3$が接するとき,定数$a$の値を求めよ.(正解は±2√3)
第7巻/第1話「Serial John Due」
ロキ「じゃア,カメーネフの死は"π"に符合してるとして…,劉の方は?」燈馬想は「自然数」,ロキは「オイラーの数」と言っていますが,eは「自然対数の底」,または「ネイピア数」と呼ばれることが多いです.「自然数」だと正の整数(または負でない整数)の意味を持つnatural numberと誤解しやすくなります.また,eという文字で表すのはオイラーが最初だったので「オイラーの数」でもいいのですが,他に「オイラーの定数(Euler's constant)」というのがあるので,混同しないようにしたいですね.
燈馬想「自然数eだよ」
ロキ「e? あのオイラーの数か?」
水原可奈「eって?」
燈馬想「円周率πは円周を円の直径で割った数.自然数eはネイピアの考案した対数という概念から生まれた数.そして虚数iは2乗して-1になる想像上の数として生まれました.この3つの記号はそれぞれ人類の歴史の中でなんの関連もなく生み出されたものです.ところが大数学者オイラーはこの3つの数に一つの関係を見つけ出した.ここでもeを「自然数」と呼んでいますが,さらにオイラーの公式(Euler's formula)$$e^{θi}=cosθ+isinθ$$に$θ=π$を代入して得られるオイラーの等式(Euler's identity)$$e^{πi}=-1$$を「オイラーの公式」と呼んでいるのが気になりますね.$e^{πi}=-1$これがオイラーの公式,人類の数学史上最も美しい式と呼ばれるものです.」
第33巻/第2話「推理小説家殺人事件」
燈馬想「『グラフで囲まれた部分の面積を求めろ』ってことなので,まず2つの交点のxの値を出して範囲を決めます.yが同値になるxってことだから…」燈馬想が水原可奈に数学を教えている場面ですが,台詞はこれだけで図もありません.これは積分の問題でしょう.中には公式を使って交点のxの値を出さずに解く方法があります.以前,映画「容疑者xの献身」で述べました.
第38巻/第2話「十七」
xのn乗根がn=1から4まで紹介されていましたが,n=4のときの解(1の4乗根)は,$x^4-1=0$を解いて$x=±1$,$±i$になります.間違ってn=4のところにn=5のときの解(1の5乗根)が書かれてあります.と思ったらよく見ると値も違っていました.正しくは次のようになります.他のサイトでいくつも見つかりますから,確認しみてください.$$\frac{(-1+\sqrt{5})±i\sqrt{10+2\sqrt{5}}}{4}, \quad \frac{(-1-\sqrt{5})±i\sqrt{10-2\sqrt{5}}}{4}$$
第44巻/第2話「Question!」
トップのタイトルページの数式です.右上の図より,円$x^2+y^2=1$と,(-1,0)を通る直線$y=m(x+1)$の,(-1,0)でない方の交点の座標を求める問題のようです.横書きの数式なのに,板書が右から始まるのが変ですね.話は右上の図から始まって,右下の連立させた方程式を変形する過程まではいいのですが,そのあとの左の計算式(燈馬想に隠れて見えにくいですが)が少しおかしいですね.右下の式を整理すると次式になります.
他の巻にも以下のように数学の話題が頻出します.数学の話ではなくても十分楽しめる知的な漫画なので,どなたにも強くお勧めします.
9巻 ケーニヒスベルグの橋
13巻 クラインの壺
15巻 デデキントの切断
20巻 カントールの無限集合
23巻 リーマン予想
29巻 ポアンカレ予想
44巻 フェルマー予想 ゴールドバッハ予想 ABC予想
47巻 P≠NP問題
トップのタイトルページの数式です.右上の図より,円$x^2+y^2=1$と,(-1,0)を通る直線$y=m(x+1)$の,(-1,0)でない方の交点の座標を求める問題のようです.横書きの数式なのに,板書が右から始まるのが変ですね.話は右上の図から始まって,右下の連立させた方程式を変形する過程まではいいのですが,そのあとの左の計算式(燈馬想に隠れて見えにくいですが)が少しおかしいですね.右下の式を整理すると次式になります.
$(1+m^2)x^2+2m^2x+(m^2-1)=0$
この左辺をを因数分解するのに,解のひとつがx=-1とわかっているので,x+1がひとつの因数になります.その割り算は右図のようになるはずなので,$m^2>1$や,$x√$というのは写し間違いだと思われます.他の巻にも以下のように数学の話題が頻出します.数学の話ではなくても十分楽しめる知的な漫画なので,どなたにも強くお勧めします.
9巻 ケーニヒスベルグの橋
13巻 クラインの壺
15巻 デデキントの切断
20巻 カントールの無限集合
23巻 リーマン予想
29巻 ポアンカレ予想
44巻 フェルマー予想 ゴールドバッハ予想 ABC予想
47巻 P≠NP問題
『HHNI眺望』で観る自然数の絵本あり。
ReplyDelete有田川町電子書籍 「もろはのつるぎ」
御講評をお願いします。
時間軸の数直線は、『幻のマスキングテープ』に・・・
『かおすのくにのかたなかーど』から・・・