Sunday 3 October 2010

小説 アイアンマン―トライアスロンにかけた17歳の青春

----
 「こう考えてみたらどうだ? 数学の単位を取らずに高校を卒業することができないように、○○の単位を取らなきゃ□□は卒業できないってな。」
----
 「○○をしなければ□□を終えることが出来ない」というための比喩として書かれています。別に数学でなくてもいいわけですが、やはり多くの人にとって数学は難しいという意識があるのでこんな表現になったものと思われます。
この応用編をひとつ。「こう考えてみたらどうだ? 数学の単位を取らずに高校を卒業することができないように、恋愛の単位を取らなきゃこどもは卒業できないってな。」
 数学とは関係ありませんが、「KY(空気が読めない)」と似た使い方で、「ヴォリュームはKIM(鼓膜いかれモード)にセットし、…」とあったので、これは日本語の省略ではないかと思って原文を探してみたら、「set the volume to OED (Optimum Eardrum Damage), ...」となっていました。翻訳者はうまく考えたものです。

Friday 6 August 2010

小説 BORN TO RUN 走るために生まれた

二進法
----
 本質的にウルトラマラソンとは、イエスかノーかで答える数百の質問からなる二進法の方程式だ。
----
 超長距離のランニングでは、レース途中様々な問題で二者択一を迫られ、「ひとつ答えをまちがえただけでレースが台なしになる。」という意味で述べられています。
 二進法では、1+1=10となります。数字を0と1しか使わないので、0, 1の次は繰り上がって10になるというわけです。通常の10進法で0, 1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9, 10は、二進法では0, 1, 10, 11, 100, 101, 110, 111, 1000, 1001, 1010になります。

Friday 16 July 2010

映画 カイジ 人生逆転ゲーム

複利計算
 主人公の伊藤開司(カイジ)が高利貸の遠藤凛子に借りた5000万円を使って最後の勝負に勝ち、5億円を手にしますが、その借金の利息は10分間に30%の複利で68分間借りていたので、1億円返してもさらに1億9770万4090円を返済しなければなりませんでした。その根拠となる計算をしてみましょう。10分ごとに1.3倍、それが68分=10分の6.8倍ですから、
      5000万×1.3^6.8=2億9770万4089.2円
となり、1億円を引くと1億9770万4090円になるというわけです。
 さて、これを1分間で3%の複利にしたらどうなるでしょう? 1分ごとに1.03倍、それが68分ですから、
      5000万×1.03^68=3億7316万5327.2円
となり、もっと大金を返済しなければなりません。
 では、もっと短い期間ごとの複利にすれすればもっと金額は増えるでしょうか。この場合を1秒ごとの複利で計算してみましょう。1秒ごとに1+0.03÷60=1.0005倍、それが68×60=4080秒ですから、
      5000万×1.0005^4080=3億8433万4464.7円
となり、さらに大金を返済しなければなりません。
 では、複利計算する期間を限りなく0に近づけた場合の極限はどうなるでしょうか。無限に増えるでしょうか。それともある額を超えないでしょうか。これを連続複利といい、次の計算で求めます。
      5000万×e^(0.3×6.8)=3億8453万0459.9円
     (eは自然対数の底=ネイピア数=2.718281828459045…)
となり、実はこれ以上増えません。

Tuesday 4 May 2010

アニメ けいおん!

因数分解
 高校の軽音楽部を舞台にしたアニメ。バンド「放課後ティータイム」のリードボーカル平沢唯は数学が苦手のようです。
--------
1学期 中間考査 数学Ⅰ
1年3組 平沢唯 12点/100点
4.次の式を因数分解せよ。
(1) x^2+13x+30
xxx+13xx+30(誤答)
(2) 2x^2+7x+3
2xxxx+7xx+3(誤答)
(3) x^2+xy+4x-2y^2+5y+3
xxx(誤答)
--------
(1)は中学生でも解ける基本問題。(2)は高校で習ういわゆる「たすきがけ」の問題。(3)は少し難しい応用問題。この誤答は積の記号×を省略せずに書き換えただけで、因数分解の意味は全くわかっていませんね。さぞかし数学の時間は退屈なことでしょう。でも、数学ができなくても楽しい高校生活を送っているようです。
正解は、(1) (x+3)(x+10) (2) (x+3)(2x+1) (3) (x+2y+1)(x-y+3)

Thursday 8 April 2010

ドラマ NUMBERS シーズン4 #11 「危険な報道」

暗号
 以前からこんなドラマがあることは知っていましたが、今回初めて見ました。主人公の数学者が、事件解決のために協力するという話。この回は、数字の並ぶ暗号を解き、それが不動産情報であることであることがわかって、誘拐された女性が救出されます。
 どんな方法で解いたのかと思ったら、ただ解いたというだけで、あまり詳しい数学的な内容はありませんでした。少し残念でした。

Saturday 20 March 2010

映画 スパイアニマル・Gフォース

有限体 一変数多項式 因数分解
 モグラのスペクルズが、暗号解読に取り組んでいる場面で、次のように言っていました。
----
"I have to factor univariate polynomial over a finite field.(有限体上の一変数多項式を因数分解しなければならないんだ。)"
----
 有限体上の一変数多項式因数分解は、暗号理論に使われています。体とは、有理数・実数・複素数などのように、加法・乗法の演算が定義されていて、0以外の元が常に乗法逆元をもつ集合をいいます。その中で、有限個の元をもつものが有限体(ガロア体ともいう)で、簡単な例として剰余類というものがあります。例えばFpとは、素数pで割った余りが等しいものを同じ数とみなしてできる有限体で、p=3のときは{0,1,2}の3個の元から成ります。この場合、普通の計算で4になったら、それは3で割った余りが1なので、1と表します。この関係を4≡1(mod 3)と表します。
[例]
 p(x)=x^3+x+1を、有限体F3上の(有限体F3の元を係数にもつ)一変数多項式として因数分解してみましょう。
 p(1)=3≡0(mod 3)よりp(x)は因数x-1を持ちます(因数定理)。そこでp(x)=x^3+x+1をx-1で普通に割り算すると、商がx^2+x+2で余りが3になりますが、3≡0(mod 3)だから割り切れました。したがって、
   p(x)=(x-1)(x^2+x+2)
となりますが、係数をF3={0,1,2}だけで表せば、-1≡2(mod 3)なので、
   p(x)=(x+2)(x^2+x+2)
と因数分解されました。

Monday 15 March 2010

映画 おもひでぽろぽろ

分数の割算
姉「九九を始めから言ってみなさい。」
たえこ「九九なんて言えるわよ。もう5年生だよ。」
姉「九九ができるならどうして間違ったのよ!」
たえこ「だって分数の割算だよ。」
姉「分母と分子をひっくり返して、掛けりゃいいだけじゃないの。学校でそう教わったでしょ?」
たえこ「うん…。」
姉「じゃあどうして間違ったの!」
たえこ「分数を分数で割るって、どういうこと?」
姉「ええ?」
たえこ「2/3個のりんごを、1/4で割るっていうのは、2/3個のりんごを、4人で分けるとひとり何個かってことでしょう?」
姉「うん…。」
たえこ「だから、1、2、3、4、5、6で、ひとり1/6個。」
姉「違う、違う、違う、違う。それは掛け算。」
たえこ「ええ!どうして?掛けるのに数が減るのー?」
姉「2/3個のりんごを、1/4で割るっていうのは…、とにかく、りんごにこだわるからわかんないのよ。掛け算はそのまま、割算はひっくり返すって覚えればいいの。」
 割り算には「等分除」と「包含除」2つの意味があります。「等分除」は、例えば6個の物を2人で分けるとか3人で分けるなど、文字通り「等分すること」です。ただしこれは割る数が正の整数に限られます。一方「包含除」は、例えば6の中に1/2はどれだけ含まれているかというように、割る数がどれだけ割られる数に含まれているかという意味で、この場合は割る数が自然数とは限りません。
 分数で割るというのは後者の場合に当てはまります。2のなかに1/3はいくつあるか。1の中に1/3は3つありますから、2のなかには2×3=6個ありますね。つまり2÷1/3=2×3=6となります。したがって、2÷1/3=2×3ということになります。
 他にもこんな説明の仕方があります。
1/2÷3/4 この分母と分子に4/3を掛けると、
=(1/2×4/3)÷(3/4×4/3)
=(1/2×4/3)÷1
=1/2×4/3

(参考)「数学入門(上)」遠山啓 著 岩波新書

Thursday 21 January 2010

啓蒙書 指数・対数のはなし ---- 森 毅

数学の本なので、数学の話題なのは当たり前なのですが、逆にその中の雑談が興味深いことがあります。
----
 死んだ小針晛宏は
   e^πi=-1
という式が好きだった。数字の謎みたいな
   e=2.71828......
   π=3.14159......
が虚数と組みあわさったとたんに、-1になってしまうところが、不思議大魔術みたいだとさかんに感心していた。たしかに、そう言われてみると、これはスゴイ式である。
----
 この本の第1刷は1989年ですから、「博士の愛した数式」よりもだいぶ前のことになります。小針晛宏(こはりあきひろ、1931-1971)は京都大学助教授でしたが、在任中に若くして亡くなりました。オイラーの等式が好きな博士で活字に登場した最初の人かも知れません。