∅ クウシュウゴウ
被害者の手のひらに∅と書かれてある連続殺人事件が起こり,一緒に階段を落ちた刑事と容疑者の魂が入れ替わり,事件の証拠品に「暗闇の清掃人∅」という漫画が見つかり,『クウシュウゴウ』を名乗る謎の人物も登場するという,少しややこしいサスペンスドラマです.
法では裁けない悪人たちを始末する闇の清掃人
コードネームは『クウシュウゴウ』
"そんな人はいないよ"という意味だ
彼は誰にも気づかれずこの世の掃除をしていく
この世にそんな人はいないよというサインだけを残し(第8話より)
数学で集合といえば,整数全体とか東京都民とか,属するかどうかがはっきりわかるものの集まりで,属するものひとつひとつを要素または元といいます.例えば10以下の正の偶数という集合は,次の2つの表し方があります.
{2, 4, 6, 8, 10}(外延=すべての要素を書きだす方法)
{x|xは10以下の正の偶数}(内包=条件を示す方法)
空集合は何も中身をもたない集合なので,あまり考える対象にならないのかなと思いますが,これが注目されるのは,冪集合(べきしゅうごう)(=Power Set) すなわち部分集合の全体を考えるときです.
どんな集合も空集合と自分自身を部分集合に持ちます.このことを次のように表します(Aはある集合).$$\varnothing \subset A,\quad A\subset A$$
例えば,集合A={a, b}の部分集合の全体は,{ { }, {a}, {b}, {a, b} }または{ ∅, {a}, {b}, A }という「集合の集合」で,その要素の個数は$2^2=4$個になります.
また,集合A={a, b, c}の部分集合の全体は,{ ∅, {a}, {b}, {c}, {a, b}, {b, c}, {c, a}, A }という「集合の集合」で,その要素の個数は$2^3=8$個になります.
以上のように,部分集合の全体の集合は,その要素の個数が$2^n$すなわち2の冪になるので,冪集合と呼ばれていて,その中には必ず「クウシュウゴウ ∅」が含まれています.
似た例として,6 (=2×3) の約数の全体は.$\lbrace1, 2, 3, 6\rbrace=\lbrace2^0\times 3^0, 2^1\times3^0, 2^0\times3^1, 2^1\times3^1\rbrace$という集合になりますが,これは2つの因数2と3をそれぞれ使わない(0乗)か使う(1乗)かの2択になり,2択するものが2種類あるので,その要素の個数は$2^2=4$個になります.
上と同様の例を考えると,30 (=2×3×5) の約数の全体は.$\lbrace1, 2, 3, 5, 6, 10, 15, 30\rbrace$=$\lbrace2^0\times 3^0\times5^0, 2^1\times3^0\times 5^0, 2^0\times3^1\times 5^0, 2^0\times3^0\times 5^1, 2^1\times3^1\times5^0, 2^1\times3^0\times5^1, 2^0\times3^1\times5^1, 2^1\times3^1\times 5^1\rbrace$という集合で,2択するものが3種類あるので,その要素の個数は$2^3=8$個になります.
因みに,要素を1つだけ持つ集合は単集合といいます.例えば{0}とか {1}などですが,{∅}は空集合か単集合のどちらでしょう? これは∅というただ1つの要素を持つ単集合です.∅={ }なので,{{ }}も単集合です.すなわち,空集合だけを要素に持つ集合は空集合ではないということになります.ちょっと紛らわしいですね.
[参考]
空集合
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%A9%BA%E9%9B%86%E5%90%88
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