素因数分解 解の公式 加法定理
2024年『本屋大賞』受賞作.「わたしはこの夏を西武に捧げようと思う」とか「わたしはお笑いの頂点を目指そうと思う」などと突然宣言し,幼なじみの島崎みゆきを巻き込んで実行していこうとする,成瀬あかりの中学2年生から高校3年生までの微笑ましい活躍を描いた短編集です.
「5082は2×3×7×11×11だな」
成瀬はなぜかわたしたちのエントリー番号の5082を割り算していた。
「何それ」
「大きい数を見ると素因数分解したくなるんだ」 (P.70)成瀬はシャープペンを机に置き、両手を後頭部に当てて天井を見上げた。ためしにかけ算九九を暗唱したら、ちゃんと最後まで言えた。解の公式も加法定理もすらすら言える。気を取り直して入試問題に向かってみたが、やっぱり手が動かない。 (P.183)
大きい数を見ると素因数分解したくなるなんていう人はあまりいないでしょうね.さて素因数分解というと,このように小さい素数から割り算を繰り返す方法を習います.
"Division Method" |
割り算をする前に割り切れるかどうかを判断する方法を知っていればもう少し速く計算できる場合があります.
■簡単な例
素因数分解したい数をNとすると,
<2で割り切れるか>
Nが偶数ならNは2で割り切れる.
<3で割り切れるか>
Nの各位の数の和が3の倍数ならNは3で割り切れる.5082は,5+0+8+2=15なので3で割り切れる.
<5で割り切れるか>
Nの一の位が0または5ならNは5で割り切れる.
<2で割り切れるか>
Nが偶数ならNは2で割り切れる.
<3で割り切れるか>
Nの各位の数の和が3の倍数ならNは3で割り切れる.5082は,5+0+8+2=15なので3で割り切れる.
<5で割り切れるか>
Nの一の位が0または5ならNは5で割り切れる.
以上はよく知られていますね.
■次の方法は教科書に載ってないのであまり知られていません.
■次の方法は教科書に載ってないのであまり知られていません.
<p=7, 11, 13で割り切れるか>
Nを小さいほうから3桁ずつ区切り,奇数番目の和と偶数番目の和との差がpで割り切れるならNはpで割り切れる.
5082は,5 | 082と区切ると,82−5=77なので7と11で割り切れるが,13では割り切れない.
2028117は,2 | 028 | 117と区切ると,117+2−28=91なので7と13で割り切れるが,11では割り切れない.
証明はこちら.
2024/8/31追記
N=10A+aとする,すなわち十の位以上の数をそのまま並べた数をA,一の位の数をaとする.5082は,A=508,a=2となる.このとき,A−naがpで割り切れるならNはpで割り切れる.ただしnはpの値によって異なる2つの値(右表参照).
証明とnの求め方はこちら.
いくつか例を見てましょう.
<p=7で割り切れるか>(右表よりn=2またはn=-5で判定する)
5082をn=2で判定すると,A−2a=508−2×2=504.504は7で割り切れるので5082は7で割り切れる.
5082をn=-5で判定すると,A−(-5)a=508−(-5)×2=518.518は7で割り切れるので5082は7で割り切れる.
<p=11で割り切れるか>(n=1またはn=-10)
5082をn=1で判定すると,A−1×a=508−1×2=506.506は11で割り切れるので5082は11で割り切れる.
<p=37で割り切れるか>(n=11またはn=-26)
188034は,A=188803,a=4
これをn=11で判定すると,A−11×a =188803−11×4 =18759.同様にして,1875−11×9 =1776.また同様にして,177−11×6 =111.これは37で割り切れるので188034は37で割り切れる.
◇
因みに,海外ではこんな方法もあります.これは,2数の積の形にすることを素数になるまで繰り返します.最初の2数がすぐに分かる場合は,こちらの方が速くできることがあります.
"Factor Tree Method" |
[参考]
7の倍数の判定法
「○の倍数」を見分ける方法
No comments:
Post a Comment