Sunday 10 March 2019

小説 千里眼の教室

2009年 松岡圭祐著 角川文庫 

整数問題 ベルヌーイの法則

新「千里眼」シリーズ第5弾.航空自衛官をやめて臨床心理士になった,抜群の知識と身体能力を持つヒロイン岬美由紀が,次々と大きな問題を解決していきます.
「得意教科はなんだ」
「数学とか…」
「ほう,数学か.末尾の4を頭に移動すると元の4倍になる整数は?」
「ええと, 102564」
「よろしい、まずまず使えそうだ。おまえをの統治官補佐に任命する。舞台にあがれ。」
この問題,こんなに容易に解けるのでしょうか.まず掛け算をして解いてみました.(click to enlarge)
このような手間のかかる計算になるので,とても即答するのは難しいですよね.

次に代数的に解いてみました.この整数を(n+1)桁と仮定し,1の位を4,10の位より上を$x$($x$はn桁)とすると,元の数は$10x+4$と表されます.末尾の4を頭に移動したものは$4×10^n+x$となるので,
\begin{align}
4(10x+4)&=4×10^n+x \\
40x+16&=4×10^n+x \\
39x&=4×10^n-16 \\
x&=\frac{4(10^n-4)}{39} \\
\end{align}n=1, 2, 3…と計算していくと,$x$が整数になる最小のnは5になります.$$x=\frac{4(10^5-4)}{39}=10256$$よって,求める最小の整数は$$10x+4=102564$$どちらにしても即答するのは困難でしょう.

この数の他に,102564102564,102564102564102564,…も条件を満たすので,最小のものが102564になります.従って,上の台詞は「末尾の4を頭に移動すると元の4倍になる最小の整数は?」にするほうがいいと思います.

ついでに「末尾のkを頭に移動すると元のk倍になる整数」を,k=4以外にいくつか計算してみました.
k=2 :  105263157894736842
k=3 :  1034482758620689655172413793
k=5 :  102040816326530612244897959183673469387755
k=6 :  1016949152542372881355932203389830508474576271186440677966

このように,小説に登場したk=4のとき以外は,非常に大きな数になってしまいました.因みに次のk=7のときは,少し短くなって,1014492753623188405797になります.ご自分で確認してみてください.


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