アポロニウスの円 中線定理
母と妹と仲良く平和に暮らしていた高校生の櫛森秀一が,母と離婚して10年後に急に現れた養父の許し難い素行不良に耐えきれなくなり,殺害してしまおうとする話です.暗い物語の中にあって数少ない微笑ましい場面,クラスメイトの福原紀子との会話です.
「アポロニウスの円」「うっ・・・・・・」数学の試験で、紀子が大失敗をやらかしたと言っている問題を持ち出してやる。 紀子は、悔しそうな顔になった。 用済みになったら必ず引き裂いてやると決意しているような目で、教科書を見やる。どうやら、数学が苦手だというのは、 嘘ではないらしい。 「中線の定理」さらに、追い打ちをかけてやる。紀子の動きが、びたりと止まった。カバンに教科書を入れながら、眉宇に険悪なものが漂いだしている。やばい。少し、 やりすぎたかもしれない。
高校数学Ⅱで登場しますが,2点からの距離の比が一定である点の軌跡をアポロニウスの円といいます.これは2点を結ぶ線分の内分点と外分点を直径の両端とする円になります(導出は教科書参照).
実は全部で4種類,まったく異なるアポロニウスの円と呼ばれるものがあります.
① 2点からの距離の比が一定である点の軌跡(上に述べた円)
② 3つの円に同時に接する円.この円を求める問題を「アポロニウスの問題」といいます.内接・外接合せて23=8個あります.(黒い円が与えられた3つの円)
Wolfram MathWorld |
④ 三角形の3つの外円(三角形の外側にあり,三角形の1辺に接し,他の2辺の延長線に接する円)すべてに接し,それらを囲む円
具体例をひとつ.②の図の下段の左から2番目,3つの円に同時に外接する円を求めてみましょう.計算をなるべく簡単にするために3つの与円を次のようにおきます.
(x−4)2+y2=22
x2+(y−5)2=32
求める円を(x−a)2+(y−b)2=rとすると,上の3つの円に接するので,
a2+b2=(r+1)2 ⋅⋅⋅(1)
(a−4)2+b2=(r+2)2⋅⋅⋅(2)
a2+(b−5)2=(r+3)2⋅⋅⋅(3)
この連立方程式を解きます.(2)-(1),(3)-(1)より,
−8a+16=2r+3 ⇒a=13−2r8
−10b+25=4r+8⇒b=17−4r10
これらを(1)に代入して整理すると,面倒な計算を経て次の2次方程式になります.
1244r2+6676r−7249=0
これを解くと次の値になります.
r=−1669+600√14622≒
a=\frac{3(238-25\sqrt{14})}{311} \fallingdotseq 1.393
\ \ b=\frac{15(115-16\sqrt{14})}{622} \fallingdotseq 1.320
計算をなるべく簡単にするために3つの与円を上のようにおいたのですが,途中から大変な計算になってしまいました.求める円は図の赤い円になります.
[参考]
Apollonius Circle
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