無理関数 導関数 楕円 積分
頭脳明晰ながらも多数のクラブを掛け持ちしているために成績が良くないというRashmore高校の生徒 Max Fisher が,ある女性教師に恋をしたことから奇想天外なことを実行しようとするというコメディーです.
冒頭に数学の授業の場面があり,男性教師が $y=\sqrt{x}$ の導関数を定義に従って求める方法とそのグラフ上の点における接線の傾きを説明しています.$y=f(x)$の導関数を求める式は$$f'(x)=\lim_{\Delta{x}\rightarrow 0}\frac{f(x+\Delta x)-f(x)}{\Delta{x}}$$なので,この式の分子が板書1の左の式になります.また,右のグラフでは,x=1のときの接線の傾きが$m=\frac{1}{2}$で,x=4のときの接線の傾きが$m=\frac{1}{4}$であることを示しています.
板書1 |
板書2 |
板書3 |
板書4 |
ただ,この解答にはいくつか小さいミスがありました.
① 板書3の下から2行目の$\theta$は$0$のはずなので,正しくは次式になります.$$=\pi ab+ab(\sin{\pi}-\sin{0})$$
② 板書4の左側の下の行は$\sin{2\theta}$の前に [ が抜けているので,正しくは次式になります.$$=2ab \left( \frac{\pi}{2}-0\right)+ab\Big[ \sin{2\theta} \Big]_0^{\frac{\pi}{2}}$$
③ 式を書く順序がおかしいですね.板書3の下から3行目の次は,以下のようになるべきです.\begin{eqnarray}A_E &=& 4ab\int_0^\frac{\pi}{2} \cos^{2}\theta d\theta \\&=& 4ab\int_0^\frac{\pi}{2} \left( \frac{1}{2}+\frac{1}{2}\cos{2\theta}\right)d\theta \\&=& 2ab \left( \frac{\pi}{2}-0\right)+ab \Big[ \sin{2\theta} \Big]_0^{\frac{\pi}{2}}\\ &=& \pi ab+ab(\sin{\pi}-\sin{0}) \\&=& \pi ab \end{eqnarray} 数か所で[ ]の使い方が気になりましたが,間違いというわけではありません.
さて,円の面積が$\pi r^2$で,楕円の面積が$\pi ab$なので,円周が$2\pi r$であることから,楕円の周長は$2\pi \times \frac{a+b}{2}=\pi(a+b)$ではないかと予想できますが,実は楕円の周長を求める方法は飛躍的に難しくなります.
半径$r$の円の場合,媒介変数表示を$(x, y)=(r\cos\theta, r\sin\theta)$とすると,その周長は次のように求められます.\begin{eqnarray} L &=& 4 \displaystyle \int_0^\frac{\pi}{2} \sqrt{\left(\frac{dx}{d\theta}\right)^2+\left(\frac{dy}{d\theta}\right)^2} d\theta \\&=& 4\int_0^\frac{\pi}{2} \sqrt{\left(-r\sin\theta\right)^2+\left(r\cos\theta \right)^2} d\theta \\&=& 4r\int_0^\frac{\pi}{2} d\theta \\ &=& 4r \times \frac{\pi}{2} \\&=& 2\pi r \end{eqnarray}同様に,長半径$a$,短半径$b$の楕円の場合,媒介変数表示を$(x, y)=(a\cos\theta, b\sin\theta)$とすると,その周長は次式になります.\begin{eqnarray} L &=& 4 \displaystyle \int_0^\frac{\pi}{2} \sqrt{\left(\frac{dx}{d\theta}\right)^2+\left(\frac{dy}{d\theta}\right)^2} d\theta \\&=& 4\int_0^\frac{\pi}{2} \sqrt{\left(-a\sin\theta\right)^2+\left(b\cos\theta \right)^2} d\theta \\&=& 4a\int_0^\frac{\pi}{2} \sqrt{1-e^2\cos^2\theta} d\theta \qquad ただし e=\frac{\sqrt{a^2-b^2} }{a}(離心率) \end{eqnarray}ところがこれは第二種完全楕円積分といって,この先は無限級数を使った大変難しい計算になります.そこで,比較的容易に計算できる近似式がいくつか知られています.その中で,最も真の値に近い式をひとつ紹介します.$$近似式\qquad\pi(a+b)\left(1+\frac{3h}{10+\sqrt{4-3h}}\right)\qquad ただしh=\frac{(a-b)^2}{(a+b)^2}$$近似式はExcelで計算するとして,真の値は上の第二種完全楕円積分を級数にしてかなり先まで計算すれば近づきますが,それでは大変すぎるので WolframAlpha に計算してもらい,それぞれの値を比較してみました.
小数点以下第5位を四捨五入 |
[参考]
Perimeter of an Ellipse
https://www.mathsisfun.com/geometry/ellipse-perimeter.html