円周率π 黄金比φ フィボナッチ数列
円周率をギリシャ文字π(PI)で表すのと同様に、黄金比の値もギリシャ文字φ(PHI)で表されます。主役の大学教授が黄金比についての講義をしていた場面で、数学専攻のある学生の台詞が次のように訳されていました。
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「私立探偵(PI)と混同しないでくださいよ。僕ら数学をやっている者はよくこういうんです。黄金比(PHI)はHがあるおかげでPIよりずっと切れ者だってね!」
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どうもこの訳はおかしいと思って原文を調べてみると、"PHI is one H of a lot cooler than PI!" となっていました。それなら「PHI(黄金比)はPI(円周率)よりHという文字がひとつ多い分だけカッコいいんですよ」というような意味なのではないかと思いました。
同じ疑問を持った読者から、この部分は誤訳ではないかと指摘された訳者のコメントは以下の通りでした。
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実は、この個所を訳していたとき、"PI"の意味が "私立探偵(Private Investigator)"なのか"π(pi)"なのかでかなり迷いました。私立探偵のほうを採用した理由は以下のふたつです。(1) 大文字で"PI"と書かれている場合、英語圏のミステリー小説の読者のほとんどは「私立探偵」の意味をまず思い浮かべる。(2) 「ファイはパイよりクールだ」という読み方は、たしかに語呂はいいが、ジョークになっていない。一方、私立探偵は"cool"(=かっこいい、切れ者)の代名詞と言ってもいいほどなので、そちらの意味にとれば気のきいたジョークになる。ただし、ここはアメリカ人でも意見が分かれるところかもしれません。また、作者はこの作品のいたるところで、ひとつの単語を二通りに解釈させるという技巧を使っており、この個所にも両方の意味をこめたのではないかと察せられます。その場合、翻訳小説においては、どちらか一方の意味を採用して、もうひとつの意味を切り捨てざるをえない場合もある、ということをどうかご理解ください。」(角川グループパブリッシングのホームページより)
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