ラプラス方程式 ステファン・ボルツマンの法則
硫化水素中毒による死亡事件が続けて発生.気体の動きを正確に予測できない限り殺人は不可能.調査をした地球化学者の青江修介が事件の解明に行き詰まっていたとき,謎の女羽原円華が現われ、その後に起きる自然現象を正確に言い当てる.「ラプラスの悪魔」(小説「ラプラスの魔女」に既出)のような知性を持つ女なので,このタイトルがつけられたものと思われます.
青江修介「君は?」「ラプラスの悪魔」は量子力学によって,その存在の可能性は否定されています.
羽原円華「魔女……,ラプラスの魔女」
青江修介「ラプラス? 数学者の? ラプラス方程式を発見したあのラプラス?」
Laplace equation
ラプラス方程式は,多変数関数$f(x_1,x_2,\cdot\cdot\cdot,x_n)$の満たす次の2階線型偏微分方程式(小説「ラプラスの魔女」に既出)になります.$$\Delta f =0$$この$\Delta$は微分演算子のひとつで"Laplacian"といい,$\Delta=\frac{∂^2}{∂{x_1}^2}+\frac{∂^2}{∂{x_2}^2}+\cdot\cdot\cdot+\frac{∂^2}{∂{x_n}^2}$を意味します.話を簡単にするため,2変数の関数$f(x,y)$でラプラス方程式を表すと,次式になります.$$\frac{∂^2f}{∂x^2}+\frac{∂^2f}{∂y^2}=0$$このラプラス方程式を満たす関数を調和関数といいます.例えば$f(x,y)=\frac{x}{x^2+y^2}$は上式を満たすので調和関数になります.確かめてみましょう.
\begin{align}
\frac{∂^2z}{∂x^2}+\frac{∂^2z}{∂y^2}&=\frac{∂}{∂x}\frac{-x^2+y^2}{(x^2+y^2)^2}+\frac{∂}{∂y}\frac{-2xy}{(x^2+y^2)^2}\\
&=\frac{-2x(x^2+y^2)^2-(-x^2+y^2)\cdot2(x^2+y^2)\cdot2x}{(x^2+y^2)^4}\\
&+\frac{-2x(x^2+y^2)^2+2xy\cdot2(x^2+y^2)\cdot2y}{(x^2+y^2)^4}\\
&=0\\
\end{align}Stefan-Boltzmann law
青江修介が大学で講義しているシーンの板書に,物体が放射するエネルギーEはその表面温度T(熱力学温度:単位はK)の4乗に比例する,すなわち$E=\sigma T^4$が成り立つという「ステファン・ボルツマンの法則」を使って地球の表面温度を求める数式が書かれていました.
(例1) 温室効果なし ε=1(の場合)
\begin{align}
T^4&=\frac{1.37 (kW/m^2) \cdot 0.7}{4\times 1\times 5.67\times10^{-8} (W/m^2/K^4)}\\
&=4.23\times 10^9 (K^4)\\
\\T&=255(K)=-18(°C)\\
\end{align}
$T^4$の分子の$1.37(kW/m^2)=1.37\times 10^3(W/m^2)$は太陽定数(単位WはJ/sとも表します),0.7は1-0.3=1-反射率=吸収率,分母の4は地球の表面積$4\pi r^2$と太陽から光を受ける面積$\pi r^2$との比,1は放射率(または射出率)ε=1,$5.67\times10^{-8}$がステファン=ボルツマン定数$\sigma$です.$T^4=4.23\times 10^9$になるので,$T=\sqrt[4]{4.23\times 10^9}≒255(K)$となり,摂氏では-18(°C)になります.
(例2) 温室効果あり ε=0.6(の場合)$$T=289.7(°C)=16.7(°C)$$となっていましたが,正しくは289.7(K)ですね.(例1)の式でε=1をε=0.6に置き換えればこの値を得ます.
偏微分 調和関数
http://tau .doshisha.ac.jp/lectures/2009.calculus-II/html.dir/node41.html
地表が吸収する太陽エネルギー
http://www.s-yamaga.jp/nanimono/taikitoumi/taikitotaiyoenergy.htm
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