複素積分 リー代数
あるマンションに引っ越してきた夫婦が,そこの住民の「交換殺人ゲーム」に巻き込まれるというミステリーです.そこに住む女性の一人が数学科の大学生で,部屋に数式の書かれたホワイトボードがあります.
(そのホワイトボードを目にして)「専攻が数学科なんです」という言い方は少しおかしいですね.さて,ホワイトボードには主に5つの数式がありました.
手塚菜奈 「これは?」
黒島沙和 「専攻が数学科なんですけど,ノートだけじゃ書ききれない計算とかあって…」
手塚菜奈 「へえー」
( ホワイトボードを裏返しながら)
黒島沙和 「今日のメインは,こっちです」
①複素関数$f(z)=z^m$の積分路とその積分計算です.
\begin{eqnarray}
\int_{C_2} z^m dz&=& \int_0^{\pi} e^{mti} ie^{ti} dt \\
&=& i\int_0^{\pi} e^{(m+1)ti}dt \\
&=& i\int_0^{\pi} \{ \cos{(m+1)t}+i\sin{(m+1)t} \}dt \\
&=& i \left[\frac {\sin{(m+1)t}}{m+1}-i\frac {\cos{(m+1)t}}{m+1}\right]_0^{\pi} \\
&=& \frac{1}{m+1}\{ \cos{(m+1)\pi}-1\} \\
&=& \begin{cases}
\ \ \ \ \ 0 & ( m : odd ) \\
-\frac{2}{m+1} & ( m : even) \\
\end{cases}
\end{eqnarray}
次に①-2後半の計算,折れ線$C_3$に沿った積分は,最後の部分がはっきり映らなかったので,確認のため,書き加えておきます.
\begin{eqnarray}
\int_{C_3} z^m dz&=& \int_{-1}^0 \{t-(t+1)i\}^m (1-i) dt + \int_0^1\{t+(t-1)i\}^m (1+i) dt \\
&=& \int_{-1}^0 (1-i)\{(1-i)t-i\}^m dt + \int_0^1 (1+i)\{(1+i)t-i\}^m dt \\
&=& \left[\frac { \{(1-i)t-i \}^{m+1} }{m+1}\right]_{-1}^0+\left[\frac { \{(1+i)t-i \}^{m+1} }{m+1}\right]_0^1 \\
&=& \frac{(-i)^{m+1}-(-1)^{m+1}+1^{m+1}-(-i)^{m+1}}{m+1} \\
&=& \begin{cases}
\ \ \ 0 & ( m : odd ) \\
\frac{2}{m+1} & ( m : even) \\
\end{cases}
\end{eqnarray}
以上の計算は,①-1積分路の図のすぐ下の式,$$\int_{C_2} z^m dz = \int_{-1}^1 t^m dt = \begin{cases}
\ \ \ 0 & ( m : odd ) \\
\frac{2}{m+1} & ( m : even) \\
\end{cases}$$を確認するためだったのでしょうが,正しくは
$$\int_{C_2} z^m dz = -\int_{-1}^1 z^m \frac{dz}{dt} dt = \begin{cases}
\ \ \ \ 0 & ( m : odd ) \\
-\frac{2}{m+1} & ( m : even) \\
\end{cases}$$
と書くべきでしょう.ただ,コーシーの積分定理より,特異点のない周回積分の値は0になるので,$$ \int_{C_2} z^m dz + \int_{C_3} z^m dz =0$$と書いた方がすっきりしますね.
②$x$と$y$を含む整式の除法ですが,何のための計算かよく分かりませんでした.分かる方は教えてください.
③複素関数$f(z)=\frac{1}{z^4-1}$を,留数定理を使って,特異点$z=i$を中心とする半径1の円に沿って積分する計算です.
④複素関数$f(z)=\frac{1}{z^2-4}$を,$z=i$の周りでローラン展開しています.
下から2行目,$( \frac{i}{3} ) )$の後にn乗がありますが,正しくは$( \frac{i}{3} )$の後ですね.
⑤リー代数 su(2) の基底 $e_1$, $e_2$, $e_3$が,括弧積$[A,B]=AB-BA$で,
$[e_1, e_2]=e_3$, $[e_2, e_3]=e_1$, $[e_3, e_1]=e_2$
を満たすことを確かめています.3次元ベクトル空間の基底 $e_1=(1,0,0)$, $e_2=(0,1,0)$, $e_3=(0,0,1)$が,外積で,
$e_1×e_2=e_3$, $e_2×e_3=e_1$, $e_3×e_1=e_2$
を満たすことと同様です.
[参考]
パウリ行列
SU(2)とSO(3)の関係
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