Wednesday, 15 November 2017

ドラマ 相棒 season16 第4話

2017年11月8日放送 テレビ朝日

Φ オイラーの関数 zero slash 漸化式 二重積分 確率

数学の才能を持つコンビニ店員の若い男(健次郎)が,大学入試問題漏洩に関与させられたあげく殺されてしまった事件の謎を,杉下右京が解き明かすという話です.

漸化式の解法

健次郎がニセ学生となって講義を聴き,終了後,教授に質問をする場面です.
「この証明,別の方法もあると思うんです.僕ちょっと考えたんですけど,まずですね,両辺を$(-1)^{n+1}$で割るんです.そうするとこれ,ただの等差数列になるんです.」 
この場面では数学に関する台詞はこれだけでした.別解を考えついて正しいかどうかを確認しに来たものと思われます.これは漸化式の解法のひとつです.注意深く録画したビデオを見てみると,板書には,漸化式から一般項を推測し,それを数学的帰納法で証明する解答が書かれてありました.その板書の一部は次の通りです.
$a_1=1, \space \space a_{n+1}=-a_n+(-1)^n$ 
$a_1=1, \space \space a_2=-2, \space \space a_3=3, \space \space \cdot \cdot \cdot \cdot, \space \space a_n=n \cdot (-1)^{n+1}$
実際にこの漸化式の両辺を$(-1)^{n+1}$で割ると,$\frac{a_{n+1}}{(-1)^{n+1}}=\frac{a_n}{(-1)^{n}}-1$となります.すると数列$\lbrace{\frac{a_n}{(-1)^{n}}}\rbrace$は,初項${\frac{a_1}{(-1)}}=-a_1=-1$,公差$-1$の等差数列となり,$\frac{a_n}{(-1)^{n}}=-1+(n-1)\cdot(-1)=-n$なので,一般項は$a_n=-n\cdot(-1)^n=n\cdot(-1)^{n+1}$と分かります.

受験生にはよく知られた解法ですが,仮に未習だったとしても,教授が「驚きました.彼は,我々には考えつかないユニークな発想を持っていたんです.」と言っていたのは少しオーバーな気がしました.

積分順序の交換

健次郎が二重積分の問題を解くシーンがありました.
$I=\displaystyle \int_0^{2a} dx \displaystyle \int_{\sqrt{2ax-x^2}}^{\sqrt{4ax}}f(x,y)dy$ 
の積分順序を交換せよ
これは,$I=\displaystyle \int\int_D f(x,y)dydx$(Dは右図の放物線と円と直線x=2aで囲まれた領域)とも書けます.先にyで積分してx軸に垂直な切り口を求め,それをxで積分して,領域Dと曲面z=f(x,y)に挟まれた部分の体積を求める式ですが,積分順序の交換だけなので$f(x,y)$は何でもOKです.

この手順を交換するのですから,先にxで積分してy軸に垂直な切り口を求め,それをyで積分する式をつくるとこのようになります.
$\displaystyle \int_0^a\int_\frac{y^2}{4a}^{a-\sqrt{a^2-y^2}}f(x,y) dx dy+\displaystyle \int_0^a\int_{a+\sqrt{a^2-y^2}}^{2a} f(x,y) dx dy+\displaystyle \int_a^{2\sqrt{2}a}\int_\frac{y^2}{4a}^{2a}f(x,y) dx dy$

道順の確率

「選択肢に正解がなかった」という台詞が何度もありました.どんな問題だったのでしょう.録画したビデオからその問題が分かりました.
[問題4] xy平面上の点Aが,原点(0, 0)から点(n, n)(nは3以上の自然数)まで以下のルールで動く.
1. 点(k, l)にあり,k<n,l<nならば,点(k+1, l)か点(k, l+1)に1/2の確率で動く.
2. 点(n, l)(l<n)なら点(n, l+1)へ,点(k, n)(k<n)なら点(k+1, n)に確率1で動く.
このとき点Aが(n, 2)を通過する確率P(n, 2)は次のうちどれか.
①$(n+1)(\frac{1}{2})^{n+1}$ ②$(n^2+1)(\frac{1}{2})^{n+2}$ ③$(n^2+5n)(\frac{1}{2})^{n+3}$ ④$\frac{1}{(n^2-4n+1)^n}$ ⑤$\frac{n}{2^n+1}$
調べてみたらこの出典は,東工大入試問題の1987年第5問の改題と分かりました.元の問題には選択肢がないので難しいですが,この改題なら,n=3の時の解,すなわちP(3, 2)を求め,選択肢にn=3を代入してこの値になるものを選べば良いわけです.(3, 3)へ行くには(3, 2)または(2, 3)を通るしかないので,対称性よりP(3, 2)=P(2, 3)=1/2となります.ところがn=3を選択肢①~⑤のどれに代入しても1/2になりません.なので「選択肢に正解がなかった」というわけです.

[Reference]
Math-Station 東工大入試研究
http://kubojie.net/titech.html

Sunday, 5 November 2017

NEWS 太陽系外からの彗星発見か 国際天文学連合

2017年10月26日 日本経済新聞他

双曲線 楕円
[ワシントン=共同] 国際天文学連合小惑星センターは25日、太陽系外から飛んできた可能性がある彗星(すいせい)を発見したと発表した。確認されれば、恒星間の軌道を飛行する初の 「恒星間彗星」となる。
 彗星は、米ハワイ大の望遠鏡が発見した「C/2017U1」。現在は地球の軌道と火星の軌道の間を飛んでいるとみられる。世界各地の天文台が30回以上観測した結果、太陽系の外からやってきた可能性があることが分かった。
 同センターは「大きな双曲線軌道を描いているようだ」としており、太陽に近づくのは1度きりで戻ってこないとみられる。オーストラリアのメディアは「太陽から25光年と比較的近くにある恒星、こと座のベガのある方向から来たようにみえる」と報じた。
 彗星は太陽の周りを回る楕円軌道を描いたり、惑星からの力を受けて太陽系外にはじき飛ばされたりするものがこれまで発見されている。
彗星や惑星は楕円軌道で,太陽はその楕円の持つ2つの焦点のひとつだと習ったので,彗星に双曲線軌道のものが存在するのは意外でした.楕円は「2点(焦点)からの距離の和が一定である点の軌跡」,双曲線は「2点(焦点)からの距離の差が一定である点の軌跡」です.いちばん上の図では軌道が急カーブしている少し内側に太陽があるので,そこが焦点ということになります.

まとめて二次曲線と呼ばれる円,楕円,放物線,双曲線は,円錐を切断する方向を変えるとこれらの形の切り口が得られるので,円錐曲線とも呼ばれています.同じ仲間といえますが,かなり形は違いますね.円とどれだけ近い形か,かけ離れた形かを示す値eを離心率といい,円の離心率は0,楕円は0<e<1,放物線はe=1,双曲線は円からかけ離れた形をしているので1<eとなります.地球の軌道離心率は0.0167なので,ほとんど円に近いということが分かります.一方,あの周期75年といわれるハレー彗星の軌道離心率は0.967なので,かなり放物線に近い,細長い楕円ということができます.

双曲線軌道なら,右上の図でいえばこの彗星は遥か遠くからやってきて,太陽(焦点)の近くの頂点 (a, 0) で急カーブして方向を変え,また遥か彼方に去って行くというイメージです.もし仮に双曲線の式(標準形は$\frac{x^2}{a^2}-\frac{y^2}{b^2}=1$)が $x^2-y^2=1$ならa=b=1なので,頂点は(1, 0),焦点$(\sqrt {a^2+b^2}, 0)$は$(\sqrt {2}, 0)$になります.双曲線の最も易しい例は,中1で学習する反比例のグラフ$y=\frac {k}{x}$ですね.$y=\frac {1}{x}$のとき,頂点は(1, 1)ですから,この軌道なら太陽は$(\sqrt {2}, \sqrt {2})$という位置にあるということになります.

<余談1> 回転軸に平行でない直線が回転すると,一葉双曲面ができます.兵庫県神戸市のポートタワーがそのようなつくりになっています.一度近くまで行って,確かめてみてください.

<余談2> 私が小中高と育った兵庫県伊丹市の市章は双曲線に似ています.一度検索して見つけてみてください.

[Refference]
For the first time, astronomers are tracking a distant visitor streaking through our solar system
http://www.sciencemag.org/news/2017/10/first-time-astronomers-are-tracking-distant-visitor-streaking-through-our-solar-system
軌道離心率
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%BB%8C%E9%81%93%E9%9B%A2%E5%BF%83%E7%8E%87