素数 素因数分解 合成数 約数
スマホのような機能に加え,その人に合った友達まで見つけてくれるというロボット型デバイス「Bボット」をほとんどの中学生が持つようになっているという近未来.友達がいなくて寂しい思いをしていた中学生のバーニーが,誕生日にもらったポンコツのBボットと一緒に本当の友情を探そうとするSFコメディです.
数学の授業のシーンで,素数の定義,最初の10個の素数,素数と合成数の例,素因数分解のし方が登場します.
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まず素数の定義です.
Prime number is a number that only divides by 1 and itself(素数は1とそれ自身でのみ割り切れる数)
prime numbers have two factors(素数は2つの約数を持つ)→ can't be even numbers(偶数ではない)
と書かれていますが,2が素数の中で唯一の偶数なので "except 2(2以外は)" と言及しておかなければいけませんね.
[クイズ] ではここで問題です.上の授業の板書をよく見て考えてください.(正解は文末)
Q1. 最初の10個の素数は,2, 3, 5, 7, 11, 13, 17の後,隠れている残り3つは何でしょう?
Q2. 向かって右側の30と10の上にある赤い文字のCはどういう意味でしょう?
Q3. 教師の後ろに隠れている素数の例は何でしょう?
さて,これまで何回か紹介した最大素数はさらに大きなものが見つかり,2022年5月現在では,2018年に発見された$2^{82589933}-1$が最大で,24862048桁にもなっています.
他にも,素因数分解の一意性,無限に存在すること,暗号への応用,素数ゼミなど,素数の話題にはキリがありませんが,今回は,素数計数関数 (Prime-counting function),素数定理 (Prime number theorem) について見てみましょう.
素数計数関数
素数計数関数は,正の実数$x$に対して,$x$以下の素数の個数を対応させる関数で,$\pi(x)$で表します.
例1. $x=2$のとき,2以下の素数は2だけなので,$\pi(2)=1$
例2. $x=10$のとき,10以下の素数は2, 3, 5, 7の4つなので,$\pi(10)=4$
例3. $x=100$のとき,100以下の素数は25個あるので,$\pi(100)=25$
素数計数関数 x=100まで(by WolframAlpha) |
これぐらいまでは手計算でなんとか求められますが,もっと大きな数になると困難です.そこで次の定理があります.
ガウスの素数定理
$x$が十分大きな整数であるとき,素数計数関数$\pi(x)$は$\displaystyle \frac{x}{\ln x}$($\ln x$は自然対数)で近似できる,すなわち次の近似式が成りたつというのが,ガウスが予想した素数定理です.$$\pi(x) \sim \frac{x}{\ln x}$$これら2つのグラフ($x=10^8$まで)を重ねると次のようになります.
x=10^8まで(by WolframAlpha) |
値が大きくなるにつれて離れていくように見えますが,それぞれの値の比は1に近づきます.この定理のおかげで大きな数になってもそれ以下の素数の個数の近似値を$\displaystyle \frac{x}{\ln x}$で求めることができます.
では素数定理の証明というよりは直感的な理由を見てみましょう(厳密な証明ではありません).十分大きな整数$x$が素数である確率$\displaystyle p(x)=\frac{\pi(x)}{x}$を考え,$\displaystyle \frac{1}{p(x)} \sim \ln x$を示せば,$\displaystyle\pi(x) \sim \frac{x}{\ln x}$が成りたつことがいえます.
$x$が素数2の倍数でない確率は$\displaystyle \left( 1-\frac{1}{2}\right)$,素数3の倍数でない確率は$\displaystyle \left( 1-\frac{1}{3}\right)$,……なので,$x$が素数である (素数の倍数でない) 確率は次式になります.$$p(x)=\left( 1-\frac{1}{2} \right) \left( 1-\frac{1}{3} \right) \left( 1-\frac{1}{5} \right)\cdot\cdot\cdot\cdot\left( 1-\frac{1}{p_x} \right)\quad\quad\quad \left( p_xはxより小さい最大の素数 \right)$$
ここでこの逆数を考えます.次式の1行目と2行目の積の各因数は初項1,公比$\displaystyle \frac{1}{p}$の等比級数の和になっています.\begin{eqnarray}\frac{1}{p(x)} &=&\frac{1}{1-\frac{1}{2}}\cdot \frac{1}{1-\frac{1}{3}} \cdot \frac{1}{1-\frac{1}{5}} \cdot\cdot\cdot\cdot\frac{1}{1-\frac{1}{p_x}} \\&=& \left(1+\frac{1}{2}+\frac{1}{2^2}+\cdot\cdot\cdot\cdot \right) \left(1+\frac{1}{3}+\frac{1}{3^2}+ \cdot \cdot \cdot \cdot \right) \left(1+\frac{1}{5}+\frac{1}{5^2}+ \cdot \cdot \cdot \cdot \right) \cdot\cdot\cdot\cdot\left(1+\frac{1}{p_x}+\frac{1}{p_x^2}\cdot\cdot\cdot\cdot\right)\\ &\sim& 1+\frac{1}{2}+\frac{1}{3}+\frac{1}{4}+\frac{1}{5}+\cdot\cdot\cdot\cdot +\frac{1}{x} \end{eqnarray}上式の2行目を展開するとすべての項がいくつかの素数の累乗の積の逆数になります.どんな整数もいくつかの素数の累乗の積になるので,$x$が十分大きければ3行目のような整数の逆数の和に近似できます(∞なら等式が成立 i.e. リーマンゼータ関数のオイラー積表示).ここで下のグラフより次の近似式も成り立ちます.$$\displaystyle1+\frac{1}{2}+\frac{1}{3}+\frac{1}{4}+\frac{1}{5}+\cdot\cdot\cdot\cdot +\frac{1}{x}\sim \int_1^x{\frac{1}{t}}dt=\ln x$$
よって,$\displaystyle \frac{1}{p(x)} \sim \ln x$を示すことができたので,$\displaystyle\pi(x) \sim \frac{x}{\ln x}$が成りたつことがいえました.
因みに,もっと正確に$x$以下の素数の個数を求めようと,素数定理の誤差を研究したリーマンは素数公式(リーマンの明示公式ともいう)を発見しました.
[参考]
Mathematics in Movies
https://people.math.harvard.edu/~knill/mathmovies/
ガウスの素数定理
https://tsujimotter.hatenablog.com/entry/2014/04/08/120132
[クイズの答]
A1. 19, 23, 29
A2. Composite Number(合成数)の頭文字
A3. 7(映画を観れば分かります)