二項定理 二項係数
高校1年生の佐丸あゆはが,担任の急な入院のため代理でやってきたイケメン数学教師弘光由貴に恋をするという話です.
授業の板書には$(a+b)^3$と$(a+b)^4$の展開式があり,その後$(a+b)^n$の展開式,すなわち二項定理を導いています.
$(a+b)^2= a^2+2ab+b^2$
$(a+b)^3= a^3+3a^2b+3ab^2+b^3$
$(a+b)^4= a^4+4a^3b+6a^2b^2+4ab^3+b^4$
係数を並べると,パスカルの三角形になります.
$(a+b)^n={}_nC_0a^n+_nC_1a^{n-1}b+_nC_2a^{n-2}b^2 {}+_nC_3a^{n-3}b^3+...+_nC_nb^n$
インターナショナルスクールで多く採用され,日本の一条校でも少しずつ普及しつつあるカリキュラム「国際バカロレア(IB)」や海外の数学教科書では次の表記の方がよく使われています.日本でも専門書ではだいたいこちらの記号が使われています.
$(a+b)^n=\begin{pmatrix} n \\ 0 \end{pmatrix} a^n+\begin{pmatrix} n \\ 1 \end{pmatrix} a^{n-1}b+\begin{pmatrix} n \\ 2 \end{pmatrix} a^{n-2}b^2 {}+\begin{pmatrix} n \\ 3 \end{pmatrix} a^{n-3}b^3+...+\begin{pmatrix} n \\ n \end{pmatrix} b^n$
以上2つの式はまったく同じ意味ですが,$_nC_k$は組合せの数,$\begin{pmatrix} n \\ k \end{pmatrix}$は二項係数と呼ばれています.もちろん実際の計算もまったく同じで,具体的には次の式になります.
$(a+b)^n = \displaystyle{a}^{n}+{n}{a}^{{{n}-{1}}}{b} +\displaystyle\frac{{{n}{\left({n}-{1}\right)}}}{{{2}!}}{a}^{{{n}-{2}}}{b}^{2} \displaystyle+\frac{{{n}{\left({n}-{1}\right)}{\left({n-2}\right)}}}{{{3}!}}{a}^{{{n}-{3}}}{b}^{3} \displaystyle+\ldots+{b}^{n}$
ここで$a$と$b$をそれぞれ$1$と$x$に置き換えると次式になります.
$(1+x)^n = 1+nx+\displaystyle\frac{n\left(n-1\right)}{2!}x^2+\frac{{{n}{\left({n}-{1}\right)}{\left({n-2}\right)}}}{{{3}!}}x^3+\ldots+x^n$
…①
$(1+x)^2= 1+2x+x^2$
$(1+x)^3= 1+3x+3x^2+x^3$
$(1+x)^4= 1+4x+6x^2+4x^3+x^4$
$(1+x)^5= 1+5x+10x^2+10x^3+5x^4+x^5$
ところで,ここまでは$n$が0以上の整数の場合だけでしたが,$n=-1$ や $n=\displaystyle\frac{1}{2}$だったらどうなるでしょう.実はこれもまったく同じ計算ができます.しかし,この上の3つの例のように有限にならず,無限に続きます.式①に代入してみましょう.
$(1+x)^{-1}= 1-x+x^2-x^3+\ldots$
$(1+x)^{\frac{1}{2}}= 1+\displaystyle\frac{1}{2}x-\frac{1}{8}x^2+\frac{1}{16}x^3+\ldots$
因みにこの式は,$f(x)=(1+x)^r$のマクローリン級数($x=0$でのテイラー級数)と一致しています.実は$n$が0以上の整数の場合も含めて,有理数,実数の場合まで拡張した二項定理を,すでにあのニュートンが発見していました.ニュ-トンの一般二項定理と呼ばれています.
<参考>
Binomial Theorem
http://mathworld.wolfram.com/BinomialTheorem.html
The Binomial Series
https://revisionmaths.com/advanced-level-maths-revision/pure-maths/algebra/binomial-series