Saturday, 2 May 2015

漫画 暗殺教室 第14巻

立方体の切断 正6角錐 3角錐

▼数学テスト最終問題「右の図のように、1辺aの立方体が周期的に並び、その各頂点と中心に原子が位置する結晶構造を体心立法格子構造という。NaやKなど、アルカリ金属の多くは、体心立法格子構造をとる。体心立法格子構造において、ある原子A0に着目したとき、空間内のすべての点のうち、他のどの原子よりもA0に近い点の集合が作る領域をD0とする。このとき、D0の体積を求めよ。」

この漫画に登場する問題はZ会が監修しているそうです。確かに実在する元素を題材にすれば現実味はありますが、数学の問題としては理解しにくいですね。まず点A0が立方体の中心でも頂点でも話は同じだということうことを確認しないと、A0を立方体の中心として考えてもいいということが言えません。この問題を分かりやすく言い換えてみました。

「1辺aの立方体の中心をA0とし、頂点をA1~A8とする。この立方体を、1辺a/2の8個の立方体に分割し、それぞれを、A0と頂点Anを結ぶ線分の垂直2等分面で切断して残った立体の体積を求めよ。」


赤羽業(あかばねカルマ)は計算せずに正解を得ましたが、上から2つ目の図のように、分割された1つの立方体は、切り口である黄色の正6角形で1/2にされていることに気づけば、求める体積も全体の1/2になることが容易に分かります。

さて勝負に負けた浅野学秀(あさのがくしゅう)の解答です。切り離す立体の図は漫画の中にありましたが(上から3つ目)、その体積は正6角錐1つと合同な三角錐3つの和になります。その体積を求めて8倍したものを、元の立方体の体積a^3から引けば解が得られます。

簡単にするために1辺を1とすると、正6角形の1辺は√(2)/4、正6角錐の高さは√(3)/4になるので、その体積は、
√(2)/4×√(6)/8×1/2×6×√(3)/4×1/3=3/64
3つの三角錐の底面は底辺と高さが1/4の直角三角形、三角錐の高さは1/2、同じものが3つだから、
 1/4×1/4×1/2×1/2×1/3×3=1/64
これらの和は
 3/64+1/64=1/16
これを8倍すると
 1/16×8=1/2
従って、求める体積は(1-1/2)a^3=(1/2)a^3ということになります。

ところでこのような領域の分け方をボロノイ分割(Voronoi tessellation)といい、平面上では2点を結ぶ線分の垂直2等分線が境界になりますが、この問題では空間内なので2点を結ぶ線分の垂直2等分面が境界になっています。この問題の分割で得られた立体は切頂8面体(truncated octahedron 正8面体の各頂点を切り落とした立体)またはケルビン14面体(Kelvin's 14-hedron)といい、空間充填多面体(space-filling polyhedron)の1つとして知られています。