2026年1月22日木曜日

小説 地の鳥 天の魚群

奥泉 光 (おくいずみひかる) 2011年 幻戯書房

自然数 素数 合成数

深い穴

長編1つと短編2つが収録されている中の,最後のたった12ページの作品「深い穴」の中の話です.主人公の「私」が素数を含まない合成数の列について考察しています.

素数を含まぬ合成数の列は簡単な数式で人工的に作りえるというのである。かりに十個の連続する合成数が欲しければ、11!+2、11!+3・・・・・・11!+11という風にすればよく、この十個の数は連続していてしかも絶対に素数ではない。むろんこれは十個に限らず、同じ方法を使うなら千個だろうが一兆個だろうがいくらでも連続する合成数の列を作りうるわけで、それどころか無限個でも可能になる理屈である。 

ここでは,自然数は0を含まないものとします.1より大きい自然数で,1とそれ自身の2つだけ約数を持つ自然数を素数といい,次のように無限に存在することが分かっています.$$2, 3, 5, 7, 11, 13, 17, 19, \dots$$約数を3つ以上持つ自然数は合成数といい,やはり無限に続きます.すなわち,自然数のうち素数でないものが合成数です.$$4, 6, 8, 9, 10, 12, 14, 15, 16, 18, 20,  \dots$$$n!$ は,「$n$の階乗」と読み,$n$から1づつ減らして1まで掛けた数になります.$$n!=n\times(n-1)\times\dots\times3\times2\times1$$従って,$n!$は$n$以下の自然数すべてで割り切れます.本文中に

「十個の連続する合成数が欲しければ、11!+2、11!+3・・・・・・11!+11という風にすればよく」 

とありますが,$11!$ は$11$以下の自然数すべてで割り切れるので,それに $k \ (=2, 3, ・・・,11)$ を足したものは$k$で割り切れます.

ではなぜ $11!+1$ から始まらないのでしょうか.その理由は,$n!$は$n$以下の自然数すべてで割り切れるので,$n!+1$ は$1$で割り切れますが,もともとどんな数も$1$で割り切れるので, $n!+1$ は素数にも合成数にもなり得るからです.

実際,$10!+1$ は $11×329891$ なので合成数ですが,$11!+1=39916801$ は素数 になります (このような $n!\pm1$ の形をした素数を階乗素数といいます).なので,9個の連続する合成数を $10!+1$ で始めることはできますが,10個の連続する合成数を $11!+1$ からは始めることはできないのです.

どちらの場合でも言えるようにまとめると,次のようになります.

「少なくとも$(n-1)$個の連続する合成数が欲しければ,$$n!+2, \   n!+3, \   \dots, \   n!+n$$という風にすればよい」

例えば,少なくとも4個の連続する合成数が欲しければ,$$5!+2,\   5!+3,\   5!+4,\   5!+5$$とすれば,122, 123, 124, 125 が得られます.

本文中にあるように 「千個だろうが」 連続する合成数が欲しければ,$$1001!+2,\   1001!+3,\   \dots,\   1001!+1001$$とすればいいのですが,これらは2571桁の巨大な数になってしまうので,!を使わないで表すのは現実的ではありません.「それどころか無限個でも可能になる理屈である」 とありますが,実際,数式では表しようがないですね.